こんにちは。
これは以下の一連の出来事の18記事目です。
GCUに移って1ヶ月、生まれてから3ヶ月が経とうとする頃、ついに「退院」の2文字が見えてきました。
生後2ヶ月後半(在胎38週頃)
声が小さい?
これはGCUに来てからずっと気になっていたことですが、娘は周りの子たちに比べて明らかに泣き声が小さい。
周りの子は体の大小に関わらずギャンギャン泣いています。
というか娘はそもそもあまり泣いていない。お腹が空いて泣いてもシクシクメソメソしていて、オギャーっと爆発的に泣いているのを見たことがありませんでした。
気になって看護師さんに聞いてみても、
「夜は泣いていますよ!」
という人とと
「あーたしかにそうですね。おっとりさんなんですね、きっと!」
と言う人もいて、わかりませんでした。が、日が立つに連れて後者の意見が目多くなった気がします。
泣く頻度や声の大きさは未熟児であるかに関わらず人それぞれですから、あまり気にしてもしかたないとは分かっていますが、2ヶ月前に受けた動脈管開存症手術のリスクに『声帯の神経への影響』もあったため、
「もしかする手術で何かあって、それが原因で声を出しにくいのではないか……」
と邪推していました。
退院するまで具体的な原因は分かりませんでしたが、退院してからは普通に泣くようになったので結局は私の心配しすぎのようでした。
顔から全ての装備が外れる
酸素が外れた数日後、ついに鼻から入れていたミルク用のチューブが外れました。
生後3ヶ月手前にして、初めて何も器具が付いていない娘の顔を見ることができました。
カニューレになった頃からほとんど顔が見えていたとは言え、やはり1本でもチューブがあるのと無いのとでは印象が違います。チューブが全て外れた顔はとてもスッキリと見えましたし、抱っこやお世話をするにもチューブの取り回しを気にすることが無くなりました。
これはつまり「自力で哺乳できる」と先生が判断したということで、それは「もう自宅に帰って生活できる」ということを意味します。
そしてそのとおり、娘の退院日が5月の連休明けに決まりました。
この頃には体重は2,500gほどになり、全身を覆っていた短肌着もだんだんと小さくなって、布団をめくると腹を出して寝ているなど体が大きくなっていることを実感できました。
突然のMRI検査結果の告知
ここまで来ると私たちの心配事はMRIによる脳室の検査結果でした。
最も大きな症状が出やすいと言われる生後5日間は脳出血などは無く、超音波検査でも異常は見られませんでしたが、退院前のMRIによる精密な検査をするまでは正確なことは分かりません。実際にそのタイミングの検査でPVL(脳室周囲白質軟化症)が発見されるケースがあることも、インターネットを通じて知っていました。
私は夫婦揃って小部屋に呼ばれて検査結果を伝えられるのかと思っていました。想像しただけで気分が悪くなるし動悸がしてきます。
……ですが、それは意外なものでした。
平日、妻が一人で面会していると担当の先生がやって来て、
「MRI検査やりました!結果聞きます?」
と軽いノリで言ってきたそうです。
そもそも、MRI検査はいつやるんだろう、と気にしていたくらいなので、あまりに突然の話に驚く妻。当然「はい」と答えると先生は、
「異常ありませんでした。脈絡叢(みゃくらくそう)という部位にすごく小さな出血があったようですが、脳機能に障害を起こすようなものではなく、脳室は非常にキレイです!」
というものでした。
こうして一瞬でMRI検査結果の告知は終わりました。
これで退院までの心配事はほとんど解消されました。正直に言うと、MRI検査が最も心配なことだったのでその結果を聞いてすごくホッとしました。
未熟児網膜症は?
そうすると残るは未熟児網膜症、なのですが実は未熟児網膜症については入院中は何も言われませんでした。
小児科の先生に聞いても
「眼科の先生からは何も言われてないし、大丈夫なんじゃないかな?」
というとても曖昧な回答しかもらえず、私たちもまぁ大丈夫なんだろうと思っていました。
実際に病状について聞いたのは退院してから2週間後の眼科検診で、
「未熟児網膜症は発症しているが自然治癒に向かっているので経過観察です。」
というものでした。
退院して3ヶ月経つ今も数週間に1度眼科に通い、経過観察を続けています。
生後3ヶ月(在胎39週頃)
初めての親子3人
退院を翌週に控たある日、マザリングを行いました。
マザリングはNICU/GCUの隣りにある個室で親子3人だけで過ごし、家に帰ってからの生活や育児をシミュレーションするものです。部屋にはナースコールが付いてはいますが緊急時以外は使いません。
娘が生まれて3ヶ月目にして、初めて親子3人だけで過ごす機会になりました。
オムツ交換や沐浴、ミルクやりはほとんど自分たちで行っていましたのでお世話自体はできますが、やはり看護師さんがいない緊張感はハンパじゃありませんでした。
特に夜。日中面会をしている私たちにとって夜に娘と過ごすこと自体が初めてとなります。
「赤ちゃんなんて寝て起きてを繰り返すんだから夜も昼も一緒でしょ?」
という気持ちと、
「夜は大きな声で泣いているって言ってたから、今日こそは元気に泣く姿が見れるのか?」
という相反する心持ちでいました。
結果はそのどちらでもありませんでした。
ギャンギャン泣き出さないのですが、ずっと「ウーン」と唸っているのです。新生児が寝ながら唸るものだと知らなかった私たちは、お腹が空いているのか?逆にお腹が痛いのか?寝言なのか?と、正解が分からずヤキモキしていました。
あまり気にせず寝てみようとしましたが、なかなかそうもできず、寝て起きてを繰り返し気が付けば朝になっていました。娘は朝になると唸りもおさまり、スヤスヤと寝ていました。
初めて親子3人で過ごしたわけですが幸せを噛みしめる余裕も無く、娘の唸り声に悩まされ完全寝不足の状態で朝を迎えました。
でも帰宅前にマザリングできたことはとても良い経験になりました。特に夜の状態を見れたのは良かったです。本当に3人だけになっていきなりあれを見たら、心配でたまらず病院に舞い戻ってしまったかもしれません。
またお世話で最大の不安だった、
”「無理してミルクを飲んでいないか?呼吸は止まっていないか?」がよく分からない”
という点についても、NICU/GCUにいた時には気づかなかったのですが、周りにモニターがない普通の部屋では娘の呼吸(鼻息)が聞こえました。
顔色を見るのはもちろんですが、鼻息も確認すれば意外と余裕でミルクをあげられることに気づけたのも大きな収穫でした。
予防接種で気を失う
退院の数日前、予防接種が行われました。
若干ずれてはいますが未熟児の予防接種も基本的には普通に生まれた子と同じように実月齢で行われます。
この日は注射4本+ロタウィルスの飲み薬というハードメニューでした。
ここで私は「さすがに注射ならギャン泣きするのでは!?」と思い、注射される様子を動画に収めました。
その姿を見て先生が、
「最近のご両親は良くスマホで撮りますよね。なんでだろうねー。」
と不思議そうに言っていました。
そして私の予想通り(というか先生も「注射で泣かないと困る。」と言っていたので当たり前ですが)、娘がギャン泣きしました。
左右の手足で計4回、注射を刺されました。私はその様子を微笑ましく見ていたのですが、事件は最後に起きました。
ロタウィルスのための予防接種は薬を飲ませて行われます。
ギャンギャン泣く娘の口を開けて少しずつ薬を流し込む先生。もうメチャクチャに泣いているので薬を飲ませるのは大変な作業ですが、何とか飲ませて残りあとわずか。
と、その時。
娘の泣き声がピタッと止みました。
モニターの酸素結合度がだんだんと下がっていきます。
そして娘の顔色がサーッと白くなる。
「あっ」
と思いました。どこからどう見ても意識を失っています。娘を抱っこした妻は体を揺すり、私も声をかけました。
先生は取り乱した様子はありませんでしたが、少し苦笑い気味に妻と一緒に体を揺すったり叩いたりしていました。
その間15秒ほどだったと思います。
モニターが徐々に回復していき、再び娘が泣き出しました。
私はものすごい冷や汗をかいていました。今までなんだかんだで呼吸が止まった場面に出くわさなかったため「息が止まるとこうなるんだ」と恐怖を感じました。
先生曰く、
「大人でも注射などで気を失ってしまう人もいるので、ショックが強かったんだと思います。が、もっと気をつけてやるべきでした。今ので体に異常が起こることはありませんが、次回からは注意します。」
とのこと。
退院が決まってからどこか気が緩んでいましたが、この出来事で改めて「いつ、何が起きるか分からない」ことを認識させられました。
最後の最後まで緊張が続きましたが、退院の日は目の前に迫っていました。