こんにちは。
デイミアン・チャゼル監督の最新作『ファーストマン』を見てきました。
作風やテイストは私が思っていたものと大きく違っていたのですがとっても楽しめました。
作品を見て感じたのは「宇宙めっちゃ怖い!」そして「あれ、これどっかで……『ラ・ラ・ランド』だ!」です。
そんな『ファーストマン』の感想をネタバレなしでまとめます。
あらすじ
この作品のあらすじは書くまでもありませんが……
アポロ計画。世界中の誰もが知っている、1969年に人類初の月面着陸を成し遂げたプロジェクト。
そしてアポロ11号に乗り込み人類で初めて月に立った男、ニール・アームストロング。
ニールの視点からこの人類初の壮大なプロジェクトを成し遂げるまでの軌跡を描く。
誰もが知っているアポロ11号と初めて月に降り立った人間、ニール・アームストロングのお話です。
基本的には史実に基づいて作られています。
キャスト・スタッフ
出演
- ニール・アームストロング:ライアン・ゴズリング
- ジャネット・アームストロング:クレア・フォイ
- エド・ホワイト:ジェイソン・クラーク
- ディーク・スレイトン:カイル・チャンドラー
- バズ・オルドリン:コリー・ストール
デイミアン・チャゼル監督の代表作『ラ・ラ・ランド』で主演を務めたライアン・ゴズリング。前作とは全く異なる、寡黙で内面を見せない男を演じましたが、素晴らしい演技でした。
スタッフ
- 監督:デイミアン・チャゼル
- 製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、アダム・メリムズ、ジョシュ・シンガー
- 原作:ジェイムズ・R・ハンセン
- 脚本:ジョシュ・シンガー
- 音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
『セッション』『ラ・ラ・ランド』に続き長編3作目を手がけたデイミアン・チャゼル監督。
わずか3作の映画が全てが大ヒットするなんて、本当に化物です。今後どうなっていくのでしょう。
またスティーブン・スピルバーグが名前を連ねていることもあって、納得の完成度でした。
『ファーストマン』感想
ここからは映画『ファーストマン』の感想を綴ります。
なおネタバレしないように注意した結果、私の言いたいことはほとんど伝わらないと思います。とにかく今すぐ映画館に行きましょう!
淡々と進むアポロ計画とその陰にある多くの犠牲に思いを馳せる
「宇宙」「人類初」というテーマの映画と言われた時、誰しも濃厚な人間ドラマや、情熱に溢れる男たちを想像するのではないでしょうか。
しかし劇中ではそれら人間ドラマのようなものは積極的には描かれていません。
その要因の一つに、ニール・アームストロングの人物像が挙げられます。
私も本作を見るまで知らなかったのですが、ニール・アームストロングは実際にかなり寡黙で冷静な人物だったようです。
『ファーストマン』で描かれるニールもそのまま。あまり喋らず、いつでも冷静で、自分の感情を表に出すことはほとんどありません。笑うこともありますが、それでも自分をさらけ出している感じがありません。
本作はそんなニールの視点で淡々と物語が進んでいきます。宇宙空間で起こるトラブルも、わりと冷静に対処していきます。アポロ11号に向けての厳しいテストや尊い犠牲もありつつ、着々と計画が進んでいきます。
でも、だからこそ、「間違いなく汗を流して、血を流して、何かを失った人がいて、月面着陸というプロジェクトが成し遂げられたんだ」とハッキリと分かります。
本作の見終わった後には、多くの犠牲を払い、自らの命を賭して人類の発展に寄与した人々とその家族に対して、畏敬の念を抱かずにはいられません。
そしてニール・アームストロングの有名な言葉、
「人間にとっては小さな一歩だが, 人類にとっては大きな飛躍である」
に込められた想いが、100倍ぐらいの濃度で感じられます。
圧倒的な音、映像を通して迫ってくる宇宙の恐怖に震えろ
私が『ファーストマン』を見て感じたのはとにかくこれです。
まず何と言っても音。
宇宙船に乗り込む音。ハッチを閉める音。ヘルメットを装着した時の息づかい。エンジン点火の轟音。激しく揺れる機体。宇宙空間で鳴り響くアラーム。
そしてここまでリアルな音の嵐を観客に浴びせた末のある重要なシーンでの無音。
「凄い」の一言。音だけで観客を物語の世界に引きずり込む。
次に映像。これは単に美しいという話ではありません。『ファーストマン』の映像で特筆すべき点は、宇宙空間、地球、そして月面。そのほとんだがニール視点、狭い宇宙船内の小さな窓を通して映し出されることです。
観客は宇宙船が発射されてから窓を見せられても何がなんだか分かりません。この窓の外の映像、CGではなく実際に1960年当時の映像をはめ込んだりしているらしい。だから何がなんだかわからないけど、確かにリアリティを感じるのです。
激しい轟音と激しく機体が揺れる中、小窓からチラチラ見える外の景色。宇宙船発射を観客はパイロット(ニール)視点で追体験することになります。
なんだか上に進んでいたと思ったら雲で覆われ、いつの間にか真っ暗になっている。全く状況がわからない。怖い。庶民が抱く静かで美しい宇宙はどこにもない。そこにあるのは、得体の知れない恐怖に満ちた空間。
観客はもはや、ニール船長が事態を解決してくれることを祈るしかありません。
この映画は
「人類初の快挙を成し遂げた男の話」
であると同時に、
「人類初の快挙を成し遂げた男に付いていって激しい恐怖を味わう体験」
でもあるのです。
とにかく音と映像が全てです。特に音。音がこの映画の本体です。
ぜひIMAXで見てください!!!
ニールが月で見たものは過去かそれとも未来か……
既に述べたとおり、ニール・アームストロングはほとんど感情を出しません。
しかし彼は物語の冒頭で、激しく感情を爆発させます。それは本作の、あるいはニール自身にとっての”鍵”とも言える出来事です。
物語の最終盤、ニールはある場所であるものを握りしめて、家族で仲良く過ごすシーンを思い浮かべます。
それは一見、物語序盤の”鍵”となる出来事以前の輝いた思い出のように見えます。
しかし本当にそうでしょうか。
あれは単なる思い出ではなく「もしこの場所にいなかったら、ここを目指していなかったら、違う道を歩んでいたらあり得たかもしれない、来てほしかった未来」だったのではないかと思います。
そしてニールはあるものを放り投げます。
「でももしはやってこない。だからこの話はここで終わりなんだよ……」
そう言われているようでした。誰でも感じたことのある哀愁を、誰も行ったことのない壮大な場所で味あわせます。
この切り口、どっかで見たことあるんだよな……
そう『ラ・ラ・ランド』でね!!! blog.wackwack.net
チャゼル監督は本当にこういうい、やるせない気持ちにさせる演出が得意ですね。
ガッツリやられました。泣くしかないじゃないかこんなもの。
とにかくIMAXで『ファーストマン』を見よう
以上、映画『ファーストマン』の感想でした。
まだ公開中ということでネタバレしないように、かなりオブラートに包んだ感想なのでほとんど伝わらなかったかと思います。
ただしこれだけは言えます。
何度も言いますが特に音です。音がこの映画の本体です。
後の地上波で見てもあの恐怖と感動はおそらく味わえません。IMAXの音響と大画面でぜひ『ファーストマン』を楽しみましょう。
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