こんにちは。
すでに年末恒例イベントになった、日本一の漫才師を決めるM1グランプリ。
今回久しぶりに生放送で見て、感想を書きたくなりました。
かまいたち推しのミーハー視点からの感想です。
- M1との出会い
- きっかけはジャルジャルの”国名分けっこ”
- しゃべくり漫才の新鮮さ
- 秀逸なネタの数々と鉄板ネタ”UFJ”
- そしてやってきた2019年のM1
- すゑひろがりずから始まった笑いの連鎖とミルクボーイという化け物
- ”UFJ”が使えない背水の陣でかまいたちの2本目は……
- それでもかまいたちがM1で見れてよかった
M1との出会い
私のお笑い遍歴は中学生の頃、NHKの爆笑オンエアバトルにハマったところからでした。と言ってもゴリゴリのお笑い好きではなく、他の中学生よりは少しだけ見ているミーハーです。
そうは言っても深夜のオンエアバトルでしか見ていなかったフットボールアワーやアンタッチャブル、ハリガネロックにアメリカザリガニがゴールデンの大型番組、しかも生放送で見れるのだから、それはそれは興奮しました。そこにワラワラ出てくる、自分が知らない超面白い芸人たち。
「漫才、面白い!」
ミーハーに拍車がかかります。
当時は夢中で見ていましたが、記憶にあるのはNONSTYLEが優勝した2008年の大会頃まで。2010年にはいつの間にか終わって、2015年にいつの間にか復活していました。
復活してからは年齢を重ねたこともあってか生放送どころか録画もせず、翌日のニュースで優勝者を知る、程度には興味を失っていました。
きっかけはジャルジャルの”国名分けっこ”
時は2018年。この年も放送は見ませんでしたが翌日のツイッターで”国名分けっこ”という言葉を見かけました。そう、ジャルジャルのあのネタです。
それが気になってHuluの配信になったタイミングで2018年分を一気に見ました。ジャルジャルの国名分けっこは言わずもがな、”フリップ漫才”と例えられた霜降り明星の新しい漫才スタイル、和牛の完成された圧巻の演技。久しぶりに見たM1は、昔に感じた興奮を思い起こさせるものでした。
そして決勝に行った3組以上に惹きつけられたのが5位敗退のかまいたち。”ポイントカード”という取るに足らないテーマで掛け合いを重ね、気が付けば話は大きく盛り上がり、ボケとツッコミの立場が逆転する。掛け合いの上手さ、テンポの良さ、話のわかりやすさ、濱家の無駄のないツッコミ、山内のサイコ感。何を取っても素晴らしく、キレイにまとまった漫才がそこにありました。
しゃべくり漫才の新鮮さ
私がM1を見出してから今に至るまで、テレビで見る漫才は圧倒的に何かのシチュエーションを再現した漫才が多いと感じています。もちろん普通に会話する漫才もたくさんやられていると思いますが、大衆にウケるテレビ向きとしてはこのシチュエーション型・コント型が目立ちます。
歴代のM1チャンピオンのネタだけでも中川家、ますだおかだ、フットボールアワー、アンタッチャブル、サンドウィッチマン、NONSTYLE、パンクブーブー、笑い飯、トレンディエンジェルあたりはそれに類するものだったと記憶しています。(私の記憶違いだったらすみません。)
さらにここ数年M1の常連となっている和牛はまさにその最高峰。昨年王者の霜降り明星も独特ではありますが、何かのシチュエーションで演じているという点は同じです。
このように近年のテレビでウケる漫才は圧倒的にシチュエーション型の漫才が多く、そんな中で見た2018年のかまいたちは紛れもない正統派のしゃべくり漫才でした。正統派のはずが、テレビを中心に漫才を見てきたミーハーの私にはそれがとても新鮮に写りました。
もちろん、しゃべくり漫才で面白い芸人さんは他にもいます。M1王者で言えばブラックマヨネーズや銀シャリです。ただこの二組はアップテンポの会話と喋りの量、そして圧倒的な勢いが笑いを誘います
それに対してかまいたちはもう少し落ち着いた、会話や構成そのものの面白さが際立っていて、そこになんとも言えない魅力を感じました。
5位敗退してしまった2018年も3番手という早い順番、かつ前の2組がイマイチで重い空気の中、出番が回ってきた不運がありました。この年の会場を温めたのは間違いなくかまいたちで、順番さえ変わっていたら2本目に進められたのでは、と思える完成度でした。
こうしてジャルジャルをきっかけに再びM1を見て、そこでかまいたちに興味を惹かれ、この正統派の漫才をもっと見てみたいと思いました。
秀逸なネタの数々と鉄板ネタ”UFJ”
とりあえずネット等でいくつかかまいたちのネタを見て、さらに驚きました。
彼らにはネタのフォーマットが無く(少なくとも素人目には無いように見える)、シチュエーションを設けたり何かを演じたりすることなく、基本的には二人の会話で笑いを取るしゃべくり漫才。そのどれもが洗練されている。単発のボケを続けるのではなく、ひとつの話題をずーーーっと引っ張り続けてどんどん話を膨らませていく。オチの着地点も美しい。
さらに凄いのがコントも抜群だということ。かまいたちと言えば2017年のキングオブコント王者ですが、そもそも漫才とコント両方でここまでテレビで目立つ芸人さんは少ない気がします。有名所ではサンドウィッチマンが思い浮かびますが、サンドウィッチマンは漫才もシチュエーション型です。
一方でかまいたちは漫才がしゃべくりなのに、全く違う舞台であるはずのコントも抜群に面白い。
ここまでで一気に「やっぱりかまいたち、凄い!」と確信しました。
そして数あるかまいたちのネタの中でも鉄板と言われる”UFJ”ネタを知ります。かまいたちのネタでも最も安定して最も面白い、この完成度の高さはこれまで見た他の芸人の漫才と比べても群を抜いています。
「M1の2本目でこのネタをやったら間違いなく優勝できるぞ」
そう思わずにはいられませんでした。タイミングを考えれば2018年の決勝2本目にはこのネタを温存していたはずです。それ故にやはり3番手という巡りの悪さが悔やまれました。
一方でUFJ以外のネタの数々は、間違いなく並の漫才師に真似できるレベルではなくめちゃくちゃに面白いが、M1という舞台での爆発力には欠ける、ということも感じました。
「順番さえ良ければ、会場が温まっていれば、UFJ以外でも3組に残れる。そうすれば2本目はUFJで圧倒的優勝できる!」
すっかりかまいたち推しになった私は、ワクワクしながら2019年のM1を待っていました。
そしてやってきた2019年のM1
ポイントカードでかまいたちを知ってから1年が経った2019年12月22日、かまいたちにとって最後のM1決勝がやってきました。その顔ぶれは和牛がまさかの準決勝敗退で、7組がM1決勝初参加。かまいたちが大本命と目されるも、どう転ぶか分からない不穏な空気が漂います。
そうして始まった1stラウンド、かまいたちは昨年より早いまさかの2番目。
「おいおいおい」
そう言わずにいられませんでした。1番目のニューヨークは点数こそ低いもののここ近年のトップバッターとしてはかなり健闘していました。それでも会場は完全に温まっておらず、2番手が不利なことは変わりません。
そんなかまいたちが選んだネタは、鉄板中の鉄板、UFJ。確かに、今年はラストイヤーで次は無い。この順番で2本目に進むには、このネタで勝負せざるを得ない。
その結果、2番手としてはこれまでに無いレベルの笑いを呼び660点という高得点を叩き出しました。この点数は昨年トップ通過した霜降り明星の662点と同水準。この時点でかまいたちが2本目に進むことは決定的でした。
しかしその一方で「2本目に何のネタを持ってくるんだろう」というモヤモヤは消えません。
さらに波乱が起こったのは直後の3番手。敗者復活から勝ち上がった和牛です。敗者復活戦をすべて見て「和牛かな」とは思っていましたが、本当に上がってきました。
ただ、復活した和牛が決勝の舞台で見せたネタは敗者復活戦と同じ”不動産屋”のネタ。正直、あのネタは2016、2017、2018年に見せた和牛のネタには劣っており「え、これで行くのか?」と感じました。(まあ冷静に考えてM1の舞台ですでに6本のネタを披露しているわけで、使える幅は減っていきますよね。)
そんなモヤッと感はあったのですが、直前のかまいたちの爆発的な笑いで会場は温まりきっていました。和牛もウケます。その結果は652点の高得点。この時点でここ数年のM1常連であるかまいたちと和牛が1位、2位となり、
「結局今年はラストイヤーにかける2組の戦いか!早く2本目みたいなー」
なんて呑気に構えていました。しかし、今年のM1はここからが本番でした。
すゑひろがりずから始まった笑いの連鎖とミルクボーイという化け物
4番手のすゑひろがりず。このネタがすごくウケている。
圧倒的な力を見せたかまいたち、和牛の後であることからのプレッシャーは微塵も感じさせず、オリジナリティ全開で会場を盛り上げている。点数は637点で3位。まだ4番手なので順位はともかくとして、この点数は高い。しかも面白い。
「これは、まだまだ楽しめそうだな!」
と、何目線かわかりませんがワクワクしていました。さらに波乱は続きます。
5番目のからし蓮根が639点、6番目の見取り図が649点と次々に3位が入れ替わっていきます。徐々に徐々に和牛との点数が詰まっていく。この順位の入れ替わりと高得点の連続は、これまで見たことが無いもので、繰り広げられる漫才もすべて面白い。
これは間違いなくすゑひろがりずの健闘にあります。かまいたち、和牛に臆すること無くベストを尽くしたからこそ、その笑いが後の組に連鎖していく。この時点で2019大会のレベルは間違いなく過去最高だと感じていました。
「これ、なんか凄いことになってきたな……!!!!」
そう気づいたときにはもう遅かった。7番目に現れたのが今大会の化け物、ミルクボーイ。681点という超高得点を叩き出してしまう。もうこの時点で会場の空気はミルクボーイになっていると、画面越しにも伝わってきました。
その後8番目のオズワルドと9番目のインディアンスは食い込めず、かまいたちの2本目進出が決定。
そうして最後の10番手。現れたのはキャラもの感が激しいぺこぱ。
「あれ、この人達去年の敗者復活戦は着物だったような。そして面白くなかったような……」
と気付き、2本目はミルクボーイ、かまいたち、和牛のつもりになっていました。
……
しかし結果はみなさんご存知のとおり、”ノリツッコまない”というジャンルを開拓したぺこぱが654点で和牛を追い抜き3位。2度に渡って和牛が敗退するという大番狂わせが起こりました。
”UFJ”が使えない背水の陣でかまいたちの2本目は……
この時点での私の感覚は、
「ペこぱは確かに面白いかもしれないが、かまいたちが上なのは間違いない。問題はミルクボーイのあの勢い。
それでもミルクボーイの漫才が”あの”フォーマットなのだとしたら、1本目の方が面白いはずだ。
地力はかまいたちが上だろうから、2本目のネタ次第で空気をひっくり返せるかもしれない」
というものでした。
そして運命の2本目でかまいたちが放ったネタは”トトロを見たことが無い自慢”という、これまたしょーもない話。私にとってはこの日が初見のネタで、どうやら新作(今年のM1予選で披露した)ネタのようです。
正直に言うとやっぱりUFJほどの完成度はありません。それでも相当面白いのは間違いない。一方でミルクボーイもやはり同じフォーマットの”最中”ですが、やはり1本目のコーンフレークほどの勢いは無いように感じます。
私自身はかまいたち推しなので客観的な判断はできませんが、勢いの下がり具合はミルクボーイのほうが大きかった気がします。
それでもかまいたちがM1で見れてよかった
結局栄冠に輝いたのミルクボーイ。8人中7人がミルクボーイに投票し、圧勝と言って良い結果でした。
これでかまいたちのM1は幕を閉じました。
「もし順番がもっと後でUFJを温存できていたら」
「もし去年の順番が変わっていれば」
という考えは尽きません。かまいたちの漫才はすでに広く評価されているのに対してこれまでチャンスに恵まれなかったミルクボーイ、という構図も審査基準に影響したのはあると思います。
ですが、もう終わってしまいました。また、終わってから知ったことですがミルクボーイももう芸歴12年でずっとこのスタイルでやってきたということ。あのネタのフォーマットはパッと出たものではなく、ずっと磨き続けてきた武器ということです。ミルクボーイも一心にしゃべくり漫才を続けてきた芸人の一人でした。
かまいたちの負けは悔しいけど、正面からぶつかり全力を尽くした、良い漫才でした。決勝1本目で見せたUFJは過去最高のUFJでした。あのUFJネタがM1という大舞台で全国の皆さんに知られた、ということだけでもかまいたちがM1に挑み続けてきた意味はあったと思います。
変わらず言えることは、かまいたちの漫才は面白く圧倒的な完成度を誇る、唯一無二の存在だということです。
売れた芸人はバラエティやMCに偏ってしまう昨今ですが、お笑いガッツリ好きではない世間の皆さんにも、かまいたちの漫才の面白さをもっともっと知ってもらえたらな、と願うばかりです。
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