『アベンジャーズ/エンドゲーム』感想 MCU11年22作品の歴史に感謝を込めて

こんにちは。

MCUマーベル・シネマティック・ユニバース)の22作目にして、事実上の完結編となるアベンジャーズ/エンドゲーム』が2019年4月26日(金)に公開されました。

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私も公開日のレイトショーで見てきましたが劇場は超満員。その人気の大きさを実感しました。


当ブログではこれまで「アベンジャーズを見る順番」というスタイルで、一つの記事の中で作品それぞれの感想を加えていきながらMCUを紹介してきました。

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しかし11年間22作品の総決算となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、短い文章に収められる代物ではありませんでしたし、私のようなMCUファンが客観的に評価できるものでもありませんでした。

エンドゲームは単なる1本の映画ではなく、MCUが11年間で積み重ねてきた22作品に対するファンの想いと、それに応える制作陣の熱意が込められた、前人未到の超一大スペクタクル傑作だったのです。

この記事でMCUファンとして過ごしてきた私の想いを含めて、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感想をまとめたいと思います。

ここから全編に渡りネタバレします。未鑑賞の方はご注意願います。

MCUとの出会い

私が初めてMCU作品を見たのは2015年に地上波で放送したアベンジャーズでした。それまでは「日本よ、これが映画だ」というふざけたキャッチコピーしか知りませんでしたが、実際に作品を見て、

「名前は聞いたことあったけど、なかなか面白いやんけ」

と思いました。ここからMCUにハマる……とはなりませんでしが、この何気なく感じた面白さが、私の頭から離れず、MCUの世界に引きずり込まれるポイントになったのは間違いありません。


2017年。このときの私は『アベンジャーズ』の他に、特にMCU作品を見ていません。しかしそんな時、HuluでMCU作品が一挙に配信されていることに気付きます。

「あれ、いつか見たアベンジャーズのシリーズじゃん」

と思い、1本目の『アイアンマン』を見てみました。これが面白かった。

”ヒーロー”のイメージとは相反するダーティーな雰囲気のオッサン、トニー・スタークを主役に据えつつも繰り広げられるのはシンプルで王道なストーリー。そしてその後の世界の広がりを匂わせるポストクレジット。

続きが気になり見る順番を調べ、その後のシリーズ作品を見ていきました。地上波で見たアベンジャーズでは特に意識していなかったアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク。さらにヴィランであるロキにも、それぞれにバックボーンがあることを知り、キャラクターの魅力に気付きました。

Huluで見ることができたのは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』まで。しかしその時点で完全にMCUにハマっていた私は、別の動画配信サービスで『ドクター・ストレンジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』『スパイダーマン:ホーム・カミング』『マイティ・ソー:バトルロイヤル』まで見ていきました。


そして2018年3月、『ブラック・パンサー』でついに映画館の上映に追いつきます。ブラック・パンサーに追いついたのは本当にギリギリで観客はまばらでした。正直に言ってこの時点では「MCUってあんまり盛り上がってないのかな?」とすら感じていました。

しかし、このタイミングで追いつけたことには大きな意義がありました。そう、翌月に公開されたアベンジャーズ/インフィニティ・ウォーです。

インフィニティ・ウォーの衝撃

ネットで予告動画を見て興奮する。公開日に座席のチケットを予約する。30歳を過ぎて初めての経験でした。公開当日、劇場に足を運ぶとそこにはインフィニティ・ウォーの公開を待つ大勢のMCUファンたちの姿!!こんなにも愛される映画シリーズのファンの一人として、この場所にいられることを嬉しく感じました。

公開日初日に映画館で見た『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は既に知られている通り、映画史に残る衝撃の内容でしたが、それ以上に、20人を超えるヒーローたちのクロスオーバー(共演)が熱く、楽しく、たった2年だけれどそれまでの18作品を追いかけ続けてきてよかったと心の底から思いました。


ですがそれと同時に、インフィニティ・ウォーがあまりにも素晴らしく衝撃的な映画体験だったため、「次の『アベンジャーズ4(仮)』は、この大作を超えられるのだろうか?」という心配もしていました。

それもそのはず。次作『アントマン&ワスプ』が公開され、さらに次の『キャプテン・マーベル』の公開が差し迫っている状況で、『アベンジャーズ4(仮)』は一向に予告映像や正式タイトルが公開されないまま。ようやく予告映像と”エンドゲーム”という副題が公開されたかと思えば、その予告には盛り上がりそうな要素が見当たりません。それどころか不吉な匂いが漂ってきます。

インフィニティ・ウォーで繰り広げられた、タイタンでのヒーロー同士のクロスオーバー。ワカンダでの圧倒的物量の大乱闘。MCU史上最高のカタルシスをもたらしたソーの降臨。これらを超える雰囲気が無い。本当に『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、MCU11年22作品を総括する、ここまで追いかけてきたファンたちの求める作品になっているのだろうか。

大傑作だった『アベンジャーズ/エンドゲーム』

そんなモヤモヤが残ったまま公開されたアベンジャーズ/エンドゲーム』

一言にまとめることは非常に難しいですが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』にはMCUファンである私が求めた全てがありました。それどころか、こちらが求める以上に、想像する以上に、制作側の11年22作品に募る想いが込められた圧倒的な大傑作でした。


ヒーロー同士の”クロスオーバー”という要素を『アベンジャーズ』で見事に成功させたMCU。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でそのクロスオーバーは頂点に達したと私は感じていました。

ではエンドゲームはどうしたのか。それはヒーロー同士ではなく、これまで積み重ねてきたMCUの歴史をクロスさせるという発想でした。

タイムトラベルという展開は当初ファンの間でも予想されたものでしたが、それは単なる”歴史の改変”ではなく”今を変える”ための旅路。11年に渡るMCUの歴史のある時点からインフィニティ・ストーンを回収するというプロットは、今まで1つの作品で展開してきたインフィニティ・ストーンの争奪戦と同じですが、それを22作品の歴史全てをひっくるめた壮大な規模でやり直したのです。

これはMCUからファンへ向けた感謝、サービス以外の何物でもありません。ファンはこれまで見てきた作品を追体験しつつ、歴史がクロスオーバーする瞬間を目撃する。そしてクロスオーバーのその先には、サノスとの最終決戦が待っている。


アベンジャーズ/エンドゲーム』はこの「11年間22作品に付いてきたMCUファンへ向けた」という観点が、過去作品と比べて振り切れていました。

これまでのMCU作品は、どこから見ても、一見さんに対しても比較的優しい作りになっていました。深く楽しむのは難しくても、最低限のキャラ紹介やルール説明を作品内で自然に行い、初見でもその面白さが分かるものだったと思います。史上最多のヒーローが登場した『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でさえ、そうでした。


しかし『アベンジャーズ/エンドゲーム』は一見さんを完全に突き放す作りです。まずキャロル(キャプテン・マーベル)がいつ合流したのかは、本作では分かりません。前作『キャプテン・マーベル』を見ている必要があります。

さらに各メンバーが向かう時代や場所をはじめ、そこで何があったのか、その場所にいる人は誰なのか、ほとんど説明が無い。加えて過去作品と比較にならないほど、MCU過去作品からの伏線やオマージュに溢れています。

  • カウンセラーとして活動するスティー
  • 引きこもるソーを見守るヴァルキリーと異星人(ミークとコーグ)
  • ニューヨークでタイムストーンを守るエンシェント・ワン
  • キャプテン・アメリカがエレベーターに乗った瞬間の緊迫感
  • 歌って踊るピーター・クイル(スターロード)
  • ローディがネビュラに対して言った「気持ちは分かるよ」
  • ヴォーミアでソウルストーンへ導く謎の人物
  • トニーの父を車に乗せるジャーヴィスという男
  • キャプテン・アメリカがムジョルニアを持つ意味
  • 割れるキャプテン・アメリカの盾
  • サムの「左から失礼」(On your left)というセリフ
  • アベンジャーズ アッセンブル」
  • ホークアイの名前を呼ぶティ・チャラ(ブラックパンサー)
  • キャプテン・アメリカを「キャップ」と呼ぶワスプ
  • トニーとピーターのハグ
  • スパイダーマンの”即死モード”
  • トニーの「私がアイアンマンだ」(I am Ironman)というセリフ
  • モーガン(トニーの娘)の「チーズバーガーが食べたい」というセリフ
  • バッキーの「バカがいなきゃバカはできないだろ?」というセリフ
  • ダンスを踊るスティーブとペギー
  • エンドロール後に鳴り響く鉄を打つ音

他にも沢山あるでしょう。これらはエンドゲームの劇中でサラッと流れていきますが、全ては過去11年21作品のどこかで伏線が張られ続けてきたものです。これらの意味を理解し、その意図に気付くことができるのは、ヒーローの強さ、優しさに惹かれ、MCUを信じて付いてきたファンたちだけ。

細かい演出のいたるところに、制作陣からMCUファンへ向けたプレゼントが埋め込まれていました。


その中でも最大のプレゼントはキャプテン・アメリカの「アベンジャーズ、アッセンブル」というセリフでしょう。

このセリフは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でキャプテン・アメリカが口にしかけたその瞬間にエンドクレジットに突入し、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ではアッセンブル機会も無いまま終わってしまったものです。

私はタイムトラベルものという噂から「過去を変えることで未来が変わる。つまり今のアベンジャーズはいなくなるので、ついにアッセンブルは叶わないのではないか」とすら予想していました。

しかしエンドゲームは、そんな心配を覆してくれたのです。


「過去を変えても未来は変わらない。変えられるのは今だけだ。」

このルールのもと、ブラックウィドウという尊い犠牲を払いミッションを成功させたアベンジャーズ。そこに迫りくる過去からやってきたサノスの大軍。絶体絶命のアベンジャーズ。それでもどんなに不利でも、たった一人になっても、盾を握り立ち向かうキャプテン・アメリカ。その絶望の中聞こえてきたのは、

「……左から失礼」

魔法陣が開き、そこに現れたのはブラックパンサーオコエ、シュリのワカンダ組。キャップの顔を見つめ優しく頷く。

颯爽と降り立つファルコン。

トニーが見送ったスパイダーマン。ロケットの家族であるスター・ロード、ドラックス、マンティス、グルート。

バッキーにワンダにウォンにエムバク。1400万605通りの未来を見渡したった一つの可能性をトニーに託したドクター・ストレンジ

”新アスガルド”でソーを支えていたヴァルキリー、コーグ、ミーク。

次々と現れる、インフィニティ・ウォーで敗れ去ったアベンジャーズたち。

さらに拍車をかけるようにサンクタムの魔導師、ワカンダの大軍、宇宙からの大連合艦隊が登場する。

サンクタムの魔導師の大軍は、インフィニティ・ウォーを生き残ったウォンが準備していたに違いない。ワカンダの戦士たちは王亡き後もオコエやエムバクが導き続けていたのだろう。

そしてキャップの前に降り立ったのはスタークがプレゼントしたであろうアイアンスーツを纏ったポッツ。

最後に、希望を捨てずにここまで戦ってきたアントマン、ウォーマシン、ロケット、ハルクが地下から復活する。


流れ出すアベンジャーズのメインテーマ。

そこに静かに鳴り響くキャプテン・アメリカの声。


アベンジャーズ、アッセンブル……!!」


期待した10000倍の迫力と光景でした。インフィニティ・ウォーで見たソーの登場シーンのカタルシスを遥かに超えていました。

全てのMCU作品を見続けて、インフィニティ・ウォーで大きな衝撃を受け、それでも悲しみに耐えてきた。それは、この瞬間を見るため。この戦いを見るためだったんだ……!!!!

でもできれば、いや、心からこの場所にはブラックウィドウがいてほしかった。でも、彼女の犠牲が無ければこのアッセンブルはなし得なかった。姿は無いけれど、彼女の魂は間違いなくあの場所に、キャプテン・アメリカの隣にアッセンブルしていたでしょう。

かつてブラックウィドウが初登場した2010年の『アイアンマン2』。その頃、MCUでの女性ヒーローは彼女一人でした。それが今ではワンダ、オコエ、シュリ、ワスプ、ガモーラ、ネビュラ、マンティス、キャロル……数多くの頼もしき女性ヒーローで溢れています。ブラックウィドウの強さ、ナターシャ・ロマノフの優しさは彼女たちに引き継がれていくことでしょう。


これだけで私のMCUファンとしての願いは成就しました。しかしこれだけでは終わらない。MCUのいや、全ヒーローの原点が帰ってくるのです。

『アイアンマン』でヒーローの存在を世界に知らしめ、『アイアンマン3』で揺るぎない誇りを手にし、そして本作『アベンジャーズ/エンドゲーム』で生き様を示したセリフ。


「私がアイアンマンだ」(I am IronMan)


誰が、この大合戦の最終盤で、このセリフを想像できたでしょうか。でもそれこそが、11年22作品を追いかけてきたMCUファンが本当に求めていたものでした。過去に類を見ない圧倒的な規模で紡がれてきた物語は、その原点となる1作目に登場したセリフで締めくくられました。


そしてもうひとり、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース。彼はインフィニティ・ストーンを過去に返す旅に出るわけですが、その中で自分の自由な人生を歩むことを、自ら選択します。私たちの時間にして8年越し、劇中の時間にして70年越しにペギー・カーターとの約束が果たされます。


本作『アベンジャーズ/エンドゲーム』は全宇宙の生命を賭けた壮大なヒーロー大戦であると同時に、アイアンマンとキャプテン・アメリカというアベンジャーズを率いた二人のヒーローの完結編になりました。

好き勝手に、自由に生きてきたトニー・スタークは、ヒーローとして、アイアンマンとし最期を迎えた。

人々のために戦い最初からヒーローだったキャプテン・アメリカは、一人の人間として、スティーブ・ロジャースとして生きる道を選んだ。

その美しさと儚さにただただ、涙を流しました。



でもこれでアベンジャーズが、MCUが終わるわけではありません。

それを示すのがエンドロール後に鳴り響く鉄を打つ音。MCUファンなら全員が知っています。あれはヒーローが生まれる音。

ホークアイから、ハルクから、ブラックウィドウから、ソーから、キャプテン・アメリカから、そしてアイアンマンからヒーローとして戦う姿やその意味を伝えられた次世代のヒーローたちがいる。

次のヒーローの時代は既に始まっています。



アベンジャーズ/エンドゲーム』が終わった今、人生で1度あるかないかの壮大な経験をさせてくれたヒーローたちに想いを馳せつつ、次の10年を目指すMCUにどこまでも付いていこうと思うばかりです。