地上波で放送していたものを録画して観た、『チームバチスタFINAL ケルベロスの肖像』。
チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像 DVD スタンダード・エディション
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: DVD
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妻がこのシリーズのドラマが好きでずっと観ているらしい。
なお本は読まないので原作は未読。
私も原作を読んだことはなく、テレビシリーズも『螺鈿迷宮』だけ観ていました。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2014/05/30
- メディア: Blu-ray
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テレビシリーズでの感想は「面白いよね~」といったところ。
ファンではないですが、ミステリアスな展開にワクワクしつつ、医療制度における様々な問題を視聴者に訴えかける、いい作品だと思います。
で、今回の映画ですが、
犯人わかりやすすぎ!トンデモ展開すぎ!
で、ちょっと残念でした。
あらすじ
国、自治体、東城医大が死因究明システムの改革として取り組む、日本初のAi(死亡時画像診断)センターが発足する。東城医大の田口(伊藤淳史)と厚生労働省の白鳥(仲村トオル)もこのプロジェクトに参加していたが、こけら落としとなるシンポジウムを前に、東城医大に脅迫状が届く。一方、死因が判別できない集団不審死事件が発生。そしてAiセンターが始動する当日、医学界を揺るがす出来事が起きようとしていた。
予想がつきすぎるミステリー
導入は良いんですよ。「密室で9人が死亡、1人が意識不明」って初っ端から異常事態。 生き残りの1人は何を見たのか!?って、めちゃくちゃ期待させるんです。
ここまでは良かったのに、その生き残りが「女を見た」発言して、視聴者はほぼ犯人を特定できてしまう。
だってここまでの話の展開で女性の主要人物は2人、うち1人はテレビシリーズからの出演でそいつのターゲットは白鳥(仲村トオル)なんだもん。テレビシリーズで散々掘り下げたうえ、今回の殺人に関連付けるには無理がある。ということで消去法でおのずと犯人わかっちゃいます。
もうね、どうなのこれ?っていう。
犯人候補の主要キャストが少なすぎる上に性別を特定できる目撃情報。ミステリー(というか演出?)として単純すぎやしませんか!?
出番が早すぎるケルベロス
タイトルの”ケルベロス”とは最新型のMRIの例え。さぞかし事件を解く鍵になるんでしょうねと思いきや、
確かに事件を解く鍵にはなったものの、後述するトンデモ展開のせいで存在感が薄すぎる。凄いのMRIじゃなくてアメリカ帰りの医者じゃねーか!という印象しかありません。完全にタイトル負け。
医学界を揺るがすスキャンダル、インパクト無さすぎ
話の本線、集団不審死事件と並行して進むのが、『螺鈿迷宮』から出演の桜宮すみれが企む白鳥への復讐。
Aiセンター発足のシンポジウムで、彼女は白鳥を地へたたき落すとんでもない医療スキャンダルを暴露する!!……という流れだったようだが、そのインパクトが小さすぎる。だって「白鳥さん、その時研修医で下っ端でしょ?そこまで責められる立場じゃなくね?」「30年前って、ここ最近東城医大で殺人事件とかもっと酷いスキャンダル起こってるやんけ。」なんだもん。
スキャンダルそのものは現実世界では当然あっちゃいけないものなんだけど、それを使って主人公を揺さぶるには弱すぎる。
最終的には「白鳥いい奴やん……」って主人公アゲにしかなってない。
この件いらないから、本線をもっと掘り下げてほしかった。
超弩級のハッカーあらわる
クライマックス、予想の斜め上を行くトンデモ展開が待ち受けています。
なんと真犯人は超弩級のハッカーで、病院にハッキングを仕掛けシステムを全てダウン!カルテも医療装置も受付システムも全て破壊します。さらにはMRIのコアをウィルスで破壊して物理的に使用不可能にするという謎の超技術まで併せ持つ。
9人殺すよりもこっちの方が圧倒的にインパクトあるよね。その手際と技術力の高さといったら、それまでの事件や犯行に至るまでのバックグラウンドなど全て吹き飛ばしてしまうほど強烈。一体どこでその技術を手に入れたのか。
日本警察はこの人雇ってサイバー捜査力の底上げを図ったらよろしいかと。
新薬開発と認可の難しさ
話の展開はイマイチでしたが、今回のテーマ「新薬開発とその認可」が抱える問題の難しさは、考えさせるものがありました。
劇中に出てくる「一万人に一人に出る副作用を開発段階で見つけるためには、計算上90年を要する」というセリフ。
確かに新薬にはリスクを伴うけれども、現実に病気で苦しんでいる人がたくさんいて、特効薬は希望です。患者やその家族からすれば少しでも早く新薬がほしい。
一方でもし自分や家族に重大な副作用が出たとしたら、新薬を恨まずにはいられないと思う。
日本は新薬認可が遅いと聞きますが、早めれば間違いなくリスクは高まります。自分や家族は薬害に遭ったことがないので「仕方ないよね……」と思ってしまうけど、当事者になったらそんなこと言えないよね、きっと。
解決策は無いのかも知れないけど、開発者・認可者・医師・患者みんなが悩んで頑張っているという現実を、この映画は切実に伝えてくれています。
ミステリーとしてはお粗末で物足りないないですが、特に主人公2人とアメリカ帰りの医師を演じる生瀬勝久の演技は必見です。 そして一大医療スペクタルのシリーズ集大成として、『チームバチスタFINAL ケルベロスの肖像』ぜひご覧ください!
【映画化原作】ケルベロスの肖像 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 海堂尊
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2014/01/09
- メディア: 文庫
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