映画『凶悪』の感想 あなたのすぐ隣にもそれはある……

こんにちは。

Huluで山田孝之主演の映画『凶悪』を観ました。

凶悪

凶悪

映画を見ての感想は、


ま さ に 凶 悪。


何と言っても山田孝之ピエール瀧リリー・フランキーの3人の演技がハンパじゃない。特にピエール瀧リリー・フランキーそれぞれの”凶悪”は圧巻です。

実在の事件”上申書殺人事件”がモデルとなっており、何も考えず褒め称えるのも不謹慎かなとも思いつつ、やっぱりおもしろい!

ということで感想を綴ります。

※若干のネタバレ注意

あらすじ

ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。

須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に仲間内では”先生”と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男(リリー・フランキー)の罪を告発する衝撃的なものだった。

藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始める……。


キャスト・スタッフ

キャスト

スタッフ

感想

キャスティングの大勝利

映画『凶悪』の何がすごいってキャスティングが、作品とキャラクターにバチッと完璧にハマっていることです。

役者たちの”凶悪”な演技でこの作品の魅力は100点です。あとは物語が100点。合計200点の満足度です。

山田孝之(藤井修一)

事件を追う主人公、ジャーナリストの藤井を演じた山田孝之。表情こそほとんど変えませんが、あの目力で見る者を圧倒します。

”真っ白な正義”ではなく、どことなく”狂った正義”を持っていそうな、汚れ感のあるジャーナリスト役がバッチリはまっていました。

ピエール瀧(須藤純次)

次にある意味で真の主人公、人を殺すことに何の躊躇もないまさに”凶悪”を体現した存在。暴力団員で死刑囚の須藤を演じたピエール瀧

もうね、とにかくね怖い。

まずあの顔面。怖すぎる。でかすぎる。もう本物のソレにしか見えません。もちろん褒めてますよ。

そして全身から滲み出る”凶悪”。体もでかい、確実に強い。

「こんな奴と関わり合ったら絶対殺される……」そう感じずにはいられない恐ろしさがあります。


一方で刑務所の面会ではしおらしく丁寧に振る舞い、一応社会に適応する常識もありそう。

でもそれが逆に薄気味悪い。と思ってたら突然のブチギレでまたまた鬼の形相に。演技の切替、メリハリが素晴らしいです。

リリー・フランキー(木村孝雄)

そしてそして全事件の首謀者であり須藤たちから”先生”と呼ばれる木村孝雄を演じたリリー・フランキー。口調やその表情は須藤と打って変わって、落ち着いた大人な雰囲気です。

だがしかし!本性は須藤以上に狂った”凶悪”。

「鉈ってある?」

「転がしてる土地あるからそこに埋めちゃおう」

「じゃあお酒飲ませて死なせちゃうから。」


はい、凶悪。

さらにこのおっさん、悪事を働く時に無邪気にはしゃぐ。

その無邪気さに背筋が凍る。ピエール瀧が見せるわかりやすい暴力ではなく、腹の底からどす黒いものが溢れ出てくる凶悪さ。完璧に狂人、いや凶人を演じきっています。

凶悪は日常にある

キャストが素晴らしいだけでなく、ストーリーももちろん面白い。

そして映画『凶悪』を見て突きつけられる、

「凶悪は日常に転がってるんだよ」

という事実に肝を冷やします。


現実の悪人は、フィクションの世界に出てくるような一種の信念や矜恃を持っていたり、カリスマ性があったり……

などということは一切無い。


現実の悪人が持っているのは

「損か得か?」

という自分中心の利己的な考えだけ。労力に対して楽に大金を得ることができれば人を埋めようが燃やそうが、何人殺そうが関係なし。罪の意識を感じたり、何かを躊躇うことはありません。

「ぶっこんじゃおう」というパワーワード

劇中で須藤が頻繁に使う

「ぶっこんじゃおう」

というパワーワード。これの使い方があまりにも軽く、それが恐ろしい。

「ぶっこんじゃおう」という言葉の意味はつまり「ぶっ○しちゃおう」ということです。そんな重大で凶悪なことを、

「よーし、いっちょ仕事しますか!」

「ランニングいくぞー」

といった仕事や部活に精を出すくらいのノリで言ってくる。言ってることとやっていることの重さのギャップこそが、凶悪。

そしてそんな考えを持つ人間が現実にいる。どころか、もしかすると自分のすぐそばにいるかもしれないのです。

素敵なクリスマスパーティー

映画『凶悪』の中でも、特に凶悪だと感じるシーンがあります。

それは暴力でも殺人でもない、家族でのクリスマスパーティーです。


須藤と木村は1件目の殺人で人を燃やしました。

その直後、彼らは家族と仲良くクリスマスパーティーを開きます。子供のためにクリスマスプレゼントを用意し、子供を抱き上げ、みんなで笑いながらローストチキンを頬張る。


戦慄を覚えます。

ここだけ切り取ればどこの家族にでもある団欒です。実際、彼らからするとどこにでもいる家族なんでしょう。そう、日常的には普通の一面もある。

そしてそれは悪人たちが紛れもなく私たち一般人と同じ世界、同じ空間に住んでいて、平和な日常の地続きとなっていることを意味します。

だから恐い。

この映画が描く”凶悪”はスクリーンだけの世界でも無ければ、遠い国の話でもない。あなたのすぐ近くで起こるかも知れない悪事なのです。

実在の事件が映画『凶悪』のモデルになっていることがその証拠です。

あなたのすぐ隣にもある”凶悪”

ということで映画『凶悪』の感想でした。

過激な表現やグロい描写満載で、視聴のハードルは高いかもしれません。

ですが主要3人の演技と日常に潜む”凶悪”の背筋が凍るような恐ろしさは、他では味わえないであろう素晴らしい映画でした。

あなたのすぐ隣にも”凶悪”があるかもしれません。そんな凶悪に巻き込まれないためにも、映画でその恐ろしさをしっかりと確認しておきましょう。



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