こんにちは。
Amazonで2018年の話題作『グレイテストショーマン』を見ました。
私自身はミュージカル映画になじみがありませんが、「ミュージカル映画ってこんなに楽しいものなんだ!!!!」と満足すると同時に、心が震わされる作品でした。
今回は映画『グレイテストショーマン』の概要と感想を紹介していきます。
なお映画『グレイテストショーマン』は実在した人物P・T・バーナムをモデルとした作品になっていますが、史実のバーナムは劇中で描かれるよりももっともっと闇が深い部分があり、本作は”良いところだけ”を切り取った作りになっているようです。
そのため史実は一切考慮せず、あくまでフィクションとしての映画『グレイテストショーマン』に対する感想を書いていきたいと思います。
※内容には若干のネタバレを含みます。
あらすじ
仕立て屋の一人息子P・T・バーナムは身分違いの上流階級の娘、チャリティに恋をする。
チャリティは引っ越し、親とも死別したバーナムだったが一人で生き延び晴れてチャリティと結婚、2人の子供を授かった。
しかしバーナムは相変わらず貧乏で会社も倒産。そんな彼が目を付けたのは”フリークス”と呼ばれる社会から見放された人々。
バーナムとフリークスによる”地上最高のショー”が幕を開ける。
キャスト・スタッフ
キャスト
- P・T・バーナム:ヒュー・ジャックマン
- フィリップ・カーライル:ザック・エフロン
- チャリティ・バーナム:ミシェル・ウィリアムズ
- ジェーン・リンド:レベッカ・ファーガソン
- アン・ウィーラー:ゼンデイヤ
- レテイ・ルッツ:キアラ・セトル
X-MENシリーズでおなじみのヒュー・ジャックマンが主役を務めます。彼の歌と踊りは素人目から見ても非常にレベルであり、それこそが最大の成功要因であることは間違いありません。
さらに映画『グレイテストショーマン』の本当の主役と言うべき”フリークス”のサーカスメンバーの中でも目を引くのが、キアラ・セトルとゼンデイヤです。
キアラは本作のハイライトシーンでもある「This Is Me」でメインボーカルを務め、日本でのプロモーションにもたびたび登場していました。その圧倒的な歌唱力、さらに力が溢れ出る踊りは本作のミュージカルシーンの原動力と言えます。
また2017年の『スパイダーマン:ホームカミング』で注目を集めたゼンデイヤは、非常に高いレベルで歌も踊りをこなし、次世代のスーパースターになるであろう能力の高さを見せつけています。
スタッフ
- 監督:マイケル・グレイシー
- 製作総指揮:ジェームズ・マンゴールド、ドナルド・J・リー・Jr、トーニャ・デイヴィス
- 脚本:ジェニー・ビックス、ビル・コンドン
- 音楽:ジョン・デブニー、ジョセフ・トラパニーズ
監督のマイケル・グレイシーはこれが長編作品の監督はこれが初めて。初監督で数十億円規模の映画を任され、成功に収めるとはなんという力量でしょう。
『グレイテストショーマン』の感想
これがミュージカル映画なんだな!!(ラ・ラ・ランドを思い起こしながら)
ミュージカル映画といえば、ちょっと前に2016年の映画『ラ・ラ・ランド』を見たんです。
『ラ・ラ・ランド』は正直に言って、冒頭のミュージカル以外は記憶に残らず「なんか頭がお花畑の男女が歌って踊ってるんだなー」と感じました。
その体験があったので『グレイテストショーマン』も身構えて見たのですが……
と心を震わされました。
『グレイテストショーマン』は物語の大部分が歌と踊りで構成され、1時間40分ぶっ通しで一つのミュージカルを見ているかのようです。
ミュージカルとしてのバリエーションも豊富で、ただ踊るだけではなく舞台の小道具を活かしていたり、サーカスの空中ブランコによるダイナミックな演出だったり、一つとして同じものがない。
さらに役者のパフォーマンスがめちゃくちゃ高く完璧なので、映画のストーリー関係なくミュージカルシーンだけでも全く飽きずに永遠に楽しめます。
そしてその肝心のミュージカルは、登場人物たちの歌と踊りがパワフルでエネルギーに満ち溢れています。見るもの全てに力を与えてくれるかのようです。
彼らが魅せる歌と踊り、表情は、社会から疎まれ拒まれ続けてきた人たちの「立ち上がり戦い続けよう、自分で道を切り開こう」という強い意志が伝わってきます。そのメッセージはただ演技をするよりも圧倒的にエネルギッシュです。
ミュージカル映画だからこそ出せる熱量。観客が感じるこの熱量こそ、『グレイテストショーマン』が最高のミュージカル映画であることの証明だと思います。
やっぱり「This Is Me」が最高
『グレイテストショーマン』にはたくさんの楽曲が使われ、様々なミュージカルが演じられます。
どれも頭にこびりついて離れない素晴らしいパフォーマンスですが、その中でも個人的に強く印象に残ったのはやはり「This Is Me」です。
この楽曲には、社会から無視され傷つけられてきたサーカス団員=フリークスの「何にも屈せず自らの力で立ち向かっていく」「自分の人生は自分の力で勝ち取る」という非常に強い意志が込められています。
劇中で「This Is Me」が披露されるのはめちゃくちゃ胸くそ悪い場面です。ごく自然と人を見下す上流階級のクソども。
だからこそ「This Is Me」のメッセージが観客の心に真っ直ぐに、弾丸のように突き刺さる。
こんな奴らに負けてたまるか!彼らの心の叫びが鳴り響きます。
『グレイテストショーマン』の主役は間違いなく彼らです。
出演者のパフォーマンスが素晴らしい!特にゼンデイヤ!
映画『グレイテストショーマン』で目を引くのはやはり出演者たちが魅せる圧巻のパフォーマンスです。
ミュージカル映画なのでここがダメだと全部ダメになってしまうのですが、とにかく素晴らしい。
主人公を演じるヒュー・ジャックマンは当然一番目立つポジションなわけですが、パワフルな歌声とキレッキレな踊りがハンパない。もはやこの人無くしてこの映画の成功は無かった。2009年から8年の歳月をかけて制作を進めてきたという情熱が、彼のパフォーマンスに注ぎ込まれています。
そして個人的に最も印象に残った役者が、空中ブランコを武器とする双子の兄妹を演じたゼンデイヤ。出演シーンが多いからというのもありますが、凄まじい存在感とパフォーマンスでした。
私は2017年の『スパイダーマン:ホーム・カミング』で彼女のことを知ったのですが、スパイダーマンでは不思議ちゃんキャラで出で立ちもかなり地味でした。
しかし『グレイテストショーマン』ではそれが一変します。これまでのキャリアで歌と踊りにガッツリ取り組んできたとあって、サーカスのメンバーの中でも抜群のオーラを放っていました。
180cmの長身から繰り出される踊りは細部にまでキレがあり、それでいて長い手足がしなやかに動く。「剛」と「柔」が入り混じった誰にも真似ができないパフォーマンスです。思わず見とれてしまいます。
これでまだ23歳なのだから、今後が非常に楽しみな女優さんです。
負け犬たちは何度でも立ち上がる
映画『グレイテストショーマン』の脚本については、特に批評家からの評判が悪いようです。
史実を歪曲して美化している点や、主人公P・T・バーナムの凄まじいクズっぷり、さらに酷いことをしたにも関わらずあっさり許されるなど”ご都合主義”的な展開が、非難されています。
確かにバーナムは悲惨な幼少期を過ごしたとは言え、
- 潰れた会社の船舶保有証を盗んでそれを担保に金を借りる。立派な犯罪です。 ‐ フリークスを見世物に使う。
- 自分は良い生活をしているが、団員(フリークス)への給料支払は滞る。
- 自分を成り上がらせてくれたフリークスを裏切る
など、庇いようのない正真正銘のクズ人間だし、作品のストーリー展開もわりと平坦でご都合主義の面があるのも否めません。
あと個人的にはフィリップとアンの恋物語が薄味過ぎて「必要だった?」とすら思いました。
しかし映画『グレイテストショーマン』が伝えようとしたことはバーナムの美談でもなければ感動的なドラマでもなく、
という力強いメッセージでしょう。
劇中の”負け犬”にあたるのがバーナム、そしてフリークスです。
バーナムもフリークスも生まれながらに負けていました。
バーナムは極度の貧乏生活で、親に先立たれ孤独な人生を歩んできました。しかしチャリティという唯一の希望を持ち続けてきたからこそ、幸せな家庭を手に入れることができた。
そしてフリークスの面々。生まれや容姿だけで社会どころか親にも疎まれ嫌われて続けてきた。彼らはこのまま負けて人生を終えるはずだった。
そんな彼らを救ったのが同じ負け犬であるバーナムでした。
確かにバーナムは金儲けのためにフリークスを利用しただけかもしれません。
しかしバーナムはこれまで疎まれ無視され続けてきたフリークスを正面から捉え、彼らが恥じていることを彼らの武器だと言ったのです。そしてそれを世に証明した。
たとえそれがバーナムにとっての金儲けの手段でも、フリークスにとっては自分の人生を切り開くきっかけになったはずです。
ここでバーナムは成り上がり家族を幸せにする目標に到達し、フリークスたちも自分の生きる道を見つけ負け犬人生から脱却しました。
しかし彼らを待ち受けていたのは再度の敗北。
フリークスはバーナムに裏切られます。かつて彼らを卑下した人間と同じような扱いを受けたのです。
そしてバーナム。故意ではないとは言えスキャンダルにより家族に見放され、自分の全てをかけてきたサーカスも失ってしまう。
そんなバーナムに声をかけたのは、かつてバーナムに声をかけられ生きる道を見出したフリークス。
バーナムに救われたフリークスたちが、今度はバーナムを救う側に立つ。バーナムはフリークスによって救われる側になる。
そうやって再度の負け犬状態から救い、救われ、彼らは帰るべき家を、自分たちが生きるべき場所に改めて気付く。「From Now On」。ここからはもう迷わない、光を見失わない。
負け犬たちは何度でも立ち上がる。自分が生きる道を探し続ける彼らの情熱は、やがて人を巻き込み大きなうねりとなって大衆を動かしていく。
裏切った、裏切られた、許す、許さないといった単純な物の見方ではなく、生きるとは、戦うとはどういうことか。バーナムとフリークスはそのメッセージを『グレイテストショーマン』で伝えているのではないでしょうか。
地上最高のショーを見逃すな
以上、映画『グレイテストショーマン』の感想でした。
正直に言って映画館で見なかったことをこれほど後悔したことはありません。
それでも『グレイテストショーマン』は画面の中から、強烈なメッセージを見ている全ての人に叩きつけます。
もちろんストーリやメッセージ抜きにしても、ミュージカル映画として音楽と踊りだけで最高に楽しめます。
ぜひ自分の目で、心で”地上最高のショー”を楽しんでください。
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