1997年から2002年にかけて週刊少年サンデーで連載された皆川亮二原作の漫画『ARMS』。
アニメ化・ゲーム化もされていて知名度はそこそこあると思います。
ARMSという漫画を振り返るとき欠かすことのできないキーワードがあります。
そう、この漫画には中二病を患う男子が求める全てのものが詰まっている。実際に私が初めてARMSを手に取ったのも中学二年生の頃でした。
中学時代の私は「『ARMS』が人生史上最高に好きな漫画だろう」と思っていました。
今でも十分に面白いですが年を経ておじさんになると、あの時ほど心は惹かれないように思います。
なぜ中学生だった私はARMSにあれ程まで心惹かれたのだろうか。
それは、中学男子を虜にする中二病な魅力に他なりません。
今回は”あの時代”を振り返り、中学男子から見たARMSの魅力を語ります。
ARMSに散りばめられた”中二病”の魅力
少年少女に芽生える特殊能力
ARMSは主人公・高槻涼を初めとした、普通の少年少女たちに特殊な能力が目覚めところから物語がスタートします。
それを機に高槻たちは謎の組織に狙われ、ありふれた日常はあっという間に崩れ去る。
「もし自分に特殊な能力があったら」
「こんな才能に目覚めたら」
「謎の組織に追われる立場だったら」
現実に起こるはずもない、でも中学生男子の誰もが抱く妄想が漫画の中で繰り広げられる。
さらに舞台は未来でも空想世界SFでもなく、読者と同じ現代。
身近な世界で具現化された自らの妄想。
中二心を鷲掴みにする。
主人公の万能感
主人公の高槻涼「どこにでもいそうな」と言いましたが、
- 勉強ができる
- 授業をたまにサボっちゃうくらいの不真面目さ
- 友達が多く人望も厚い
- スポーツ万能
- 将来の嫁候補である幼馴染みがいる
- 父親仕込でサバイバル能力に長ける
- ツバメのヒナを巣に戻してあげる優しい心
- 深い絶望に陥っても自力で戻ってくる強靭な精神
ね、いないでしょ?
完璧な主人公を見た僕らは「こんなやついねーよ」と嫌悪感を抱く。
だけれどそれは表面的なもので、心の底では彼に惹かれているのだ。
だってそこにいる彼は「僕らがなりたかった姿」だから。
完璧で嫌味がない、主人公としての完成形である高槻涼。心のどこかで理想を追う中二の僕らにとって、彼の挑戦は応援せずにいられないものなのだ。
立ちはだかる巨大組織と陰謀論
高槻たちが対峙する謎の組織『エグリゴリ』。
謎が謎を呼ぶ、謎だらけの組織。分かりやすいほどの悪。
「街一つを壊滅させられるほどの軍隊をもっている!?」
「こ、こいつがキース!」
「え、キースまだいるの!?じゃああのキースは……!?」
「アメリカ大統領も手が出せないなんて……」
「人体実験……悪いのはキースやない!人間どもや!」
……と、数え切れないほどの謎と伏線をばら撒き、考え得る限りの極悪非道を貫きつつも、悲しい過去を持つエグリゴリ。
巨大組織と見えざる力が大好きな中学生男子。
だけどそこにちょっぴりと「悪いだけじゃない」塩味を効かせた敵の存在に、大人の階段を登りつつある僕らは魅せられる。
力の進化
少年漫画には進化・成長が付きもので、ARMSも例外ではない。
ARMSの主人公たちが成し遂げる進化は「心」「力」「見た目」の3つ。
その中でも「見た目」の進化の見せ方が凄まじい。
大体の少年漫画と言ったら、初っ端からカッコいい魅力的な”武器”があるもんです。
しかしARMSにおいて初めて見る”武器”はとてもグロテスク。
序盤でのARMSは腕・足がどんな形状なのかも良くわからないし、主人公たちはそれを制御できず自分の意に反して人を傷つける。
そこにあるのはカッコイイ武器なんかではなく、自分の体に住み着いた謎の生物。
話が進むに連れて謎の生物・ARMSと意思疎通ができるようになり、形も安定してきて立派な”武器”に見えるようになる。
そして絶体絶命の大ピンチに万を持して登場する全身変形体。
己の力に苦しみ、圧倒的な敵を目の当たりにした先に手に入れた強い心・本当の力、そして見た目。
進化のカタルシスに心が震える。
最強のパワーワード
ARMSを代表するセリフといえばこれ。
もうこんなのね、興奮しない中学生いますか?
中二男子が興奮するものの代表格「謎の問いかけ」。最高。
「不思議の国のアリス」という題材
続いてこれ。不思議の国のアリスというと、中学生的にはさほど興味のない童話です。
しかしARMSでは、不思議の国のアリスが持つ要素うまーーーーく取り入れたことでストーリーはもちろん、中二病が輝く。
その例をいくつか挙げてみます。
日本語を英名で呼ぶ
これ。中学生大好きなやつ。
「”本気”と書いて”マジ”と読む」
みたいなね。
- ”魔獣”で”ジャバウォック”
- ”騎士”で”ナイト”
- ”白兎”で”ホワイトラビット”
といった具合に不思議の国のアリスのキャラクターたちに漢字を当てはめる。
さらに全話のタイトルも漢字二文字で英語読み。
(当時は)英語習いたてであった中学生にとって、その英語の響きはオサレ以外の何者でもなかった。
そしてスペルと筆記体を自分で調べ、書いて、より一層オサレに心震えたのだ。
技名
各ARMSたちの特徴を活かした必殺技。全て日本語と英語を組み合わせた構成です。
カッコイイ響きのカタカナに、いかつい漢字の組み合わせ。中学男子の眠れる熱い血をざわつかせる。
ARMSじゃないけど強いやつ
話の中心は主人公一同のARMS対エグリゴリのARMSなわけですが、ARMSじゃない強いやつらも沢山出てくる。
この”ARMSに依存しない話の展開”が、普通じゃないものに敏感な中学男子のアンテナにひっかかる!
以下、ARMSにおける普通じゃない人たちをご紹介。
コウ・カルナギ
何の改造も受けておらず自分の肉体のみを武器とする。猛獣を素手で殺し、量産型ARMSを軽く捻り潰す。
初出時は絶望的な強さであり、主人公たちが絶対絶滅に陥った時には心強い希望として現れる。
このアウトロー感、大好き。
スティンガー
エグリゴリの強化人間部隊″猟犬(ハウンド)″の隊長。
脳内のアドレナリンを過剰に分泌することで戦闘能力を飛躍的に高める。
カルナギほどのインパクトはないが高槻たちとの激闘の末、親心を思い出したシーンでは中学男子もホロリとくる。
高槻巌・美沙
出た!!出ました!!
”ただのサラリーマンと主婦”と思われていた高槻涼の両親。
しかしその実態は凄腕の傭兵だった。父・巌にいたっては完全体のARMSですら圧倒する、力だけではなく強靭な精神の持ち主。おそらく作中最強のキャラクターです。
この″実は凄いやつでした″は中学男子にとってたまらない展開。自分だけではなく「身近な人が特殊な力を持っていた」「裏の顔があった」という妄想を見事に取り入れている。
中学生でARMSに出会えた幸運
以上、ARMSがもつ魅力から中二的な要素に絞って振り返ってきました。
振り返って改めて感じたのは「中学生でARMSを読めてよかった」ということです。
ARMSは今読んでも、いつ読んでもおもしろく、色褪せることのない名作であることは確かです。
でももし、高校生で読んでいたら話の熱さと中二っぽさに「ちょっとダサい」と斜に構えていたかもしれません。
大人になってから読んでいたら「この漫画おもしれー」と何の感慨もなくおもしろさだけに終始していたかもしれません。
そうではなく、一生の中でも最大級に妄想を広げる中二病の発祥時期。そのタイミングで読んだからこそ、特殊能力が目覚めるはずだった自分を主人公たちに投影し、謎の組織と壮絶な戦いを繰り広げる世界へ入り込んだかのように、作品に没頭できた。
あの感覚はあの時しか味わえない、今読み返してもダメなんです。
だから、今中学生のみなさんは急いでARMSを手にとり読んでください。
そして大人になってしまったみなさん。ARMSはいつまでもおもしろい。これからも読み続けましょう。そして願わくば、次の世代へこの作品を継いでいきましょう。

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