『ライムスター』(RHYMESTER)を知っている人は、そんなに多くないかもしれません。
結成20年以上を誇る日本語ラップの草分け的存在で、立場的にはベテラン・レジェンドな方々です。
日本で最も成功しているであろうHIPHOPグループの『RIP SLYME』や『KREVA』も彼らの後輩にあたります。
最近では日本でもラップものの企画(CMやイベント)をよく見かけるようになりました。それもこれもライムスターが”日本語ラップ”を牽引し続けてきた成果だと思っています。
より多くの人にライムスターを知ってもらうべく、日本語ラップが良くわからない人にも、少しだけ興味がある人にもおすすめしたい、ライムスターの”耳ヲ貸スベキ”名曲20選をご紹介します。*1
ライムスターを紹介するぞ!
まずはライムスターのことを簡単に紹介します。
(Amebreakより)
ライムスターの来歴とここがすごい!
ライムスターは2018年で結成29年となる、大ベテランなヒップホップユニットです。
メンバー構成は宇多丸(うたまる)、Mummy-D(まみーでぃー)、DJ-JIN(でぃーじぇーじん)の2MC+1DJ。
3人全員が早稲田大学の卒業生です。
1989年、大学の音楽サークル「早稲田大学ソウルミュージック研究会ギャラクシー」で出会った宇多丸とMummy-Dが結成したことがライムスターの始まり。
それ以来、日本のヒップホップの最前線を走り続けています。
『KING OF STAGE』の異名を取る圧倒的パフォーマンス
そんな彼らの別名は『KING OF STAGE』(キング・オブ・ステージ)。
その名の通りライブでのパフォーマンスは圧倒的。セットリストから舞台演出、MCと細かいところまで徹底している。そしてライブでも全く劣化しないラップスキルの高さ。
経験も実力も、誰もが認める日本ヒップホップ界の至宝です。
ラップの驚異的な聴き取りやすさ
さらにラップの聴きやすさは脅威的。
日本語ラップと言えば「何を言っているのかわからない」という印象が強いでしょう。しかしRHYMESTERの紡ぎ出すラップは、めちゃくちゃ聞きやすい。聞きやすいから一つの曲で展開されるストーリーや、その後ろで流れる手の込んだトラックも楽しむことができます。
ラップの聴きやすさは日本のラップグループの中でダントツNo1です。
結成20年目の武道館ライブ
そんなライムスターは、結成20年目の2001年に武道館での単独ライブを決行。その後1年間の活動休止を終えて活動開始、今に至ります。
結成半年で武道館にいっちゃうバンドがザラにいるこのご時世に、ずーーーーーっと地道に努力し続けて、20年目の節目に武道館での公演。
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メンバー紹介
宇多丸
マイクロフォンNo.1、最年長の49歳。ハゲ。
高校生の時「現国の模試で全国2位を取ったことが人生のピーク」と豪語する。
趣味は映画、漫画、アニメ、ゲームとサブカルチャーに明るい。
映画好きが講じて毎週土曜日のTBSラジオ「ウィークエンドシャッフル」では、自腹で観てきた映画を豊富な知識と独自の視点で批評します。この批評がめちゃくちゃ聞きごたえあります。ぜひ一度は聞いてみてください!
たくさんのサブカルチャーに刺激を受けまくった結果、他の人が真似出来ない独自のライミング(言葉選び)テクニックを手に入れています。
一つの歌の中で物語を紡ぐ力が圧倒的です。もちろん韻踏みもめちゃくちゃ上手い。
Mummy-D
マイクロフォンNo2、酔っぱらいのライマー。48歳、イケメン。
日本のヒップホップ界において、トップクラスのラップスキルを持っています。
ラップをメロディーに乗せるのがうまく、逆にあえてメロディーから外したオフビートも上手い。
何をやらせても完璧にやりこなす、天才肌です。
近年はバラエティや俳優業にも挑戦し、ドラマ『カルテット』での出演が(ファンの間で)話題になりました。

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DJ JIN
(芽瑠璃堂より)
マイクロフォンNo3、ターンテーブルNo1&2。47歳、奥さんが仙台出身。
基本はDJですが、たまにラップもする異色のDJ。
そのDJスタイルも独特で、ターンテーブル2枚を同時に使います。
格闘技が好きで、雰囲気もメンバーの中で一番男臭い。
ライムスターのおすすめ名曲20を紹介するぞ!
いよいよ本題です!
WACKWACK RHYTHM ISLAND
お祭り騒ぎ感がハンパない。
南国風なサンバのリズムに乗せて軽快なラップが耳に心地いい。
ラップがどうとかヒップホップがどうとか、そんな細かいこと抜きにして「音楽って楽しいよなぁ」と思わせてくれる一曲。
曲自体は『WACK WACK RHYTHM BAND』というバンド名義の曲でライムスターはフューチャリングです。しかしながらヒップホップを他ジャンルの音楽に融合させる、ライムスターの実力の高さがよく分かるという意味でも彼らの代表曲と言っていいでしょう。
「とにかく楽しい気分になりたい!」というあなたにおすすめです。
そしてまた歌い出す
収録アルバム『POP LIFE』の発売直後に東日本大震災が発生。
アルバム一曲目のこの曲の歌詞に込められた「挫けてる場合じゃねーぞ、お前がやらずに誰がやるんだよ!」というメッセージが、全ての日本人を励ましているように感じる。
もちろん地震と発売時期が同じだったのは偶然だけど、震災を受けての使命感と希望に溢れた素晴らしい曲。
この先進む道に悩んでいるあなたにおすすめ。背中を押してくれる曲です。
K.U.F.U.
「このグループが歌うから説得力がある」という曲、あるじゃないですか。それ。
ことライムスターにおいては「ラップ(笑)」という時代から一貫して日本語ラップを牽引し続けてきた背景があり、「人生は知恵を絞り出して、いかに”工夫”して生きていくのかが大事なんだよ!」というメッセージに説得力がありすぎる。
さらに遊び心にも富んでいて、宇多丸のラストヴァースは必聴。童話”ウサギとカメ”で褒められる立場にあるカメを、圧倒的スキルでdisりまくる。
カメどころか人間以外の生物全てをdisる宇多丸師匠のバースがハンパない。
日本語ラップの面白さを知りたいあなたにおすすめです。
肉体関係 Part2
横山剣率いる『クレイジーケンバンド』がフィーチャリング。
曲の端から端まで”エロ”と”カッコよさ”がほとばしる。ここまでエロをカッコよく歌いきるグループを、私は他に知らない。
ライムスターはもちろんだが、やはり横山剣の渋さが図抜けている。
ただし彼女と一緒に聴くことはおすすめしません。間違っても初デートで流さないように。
B-BOYイズム
私の中で”ライムスターにおけるB-BOY3部作”と勝手に考えている3曲があり、その1つめがライムスターを代表するこの曲は「B-BOYとはこうあるべき」という指南書的な存在。
「歌詞が良い」「リズムが良い」「ラップが上手い」とか細かいことじゃなく「B-BOYの志をライムスターが言語化して発信した」という存在そのものが偉大。
ファンじゃない人にはイマイチかもしれないが、ライムスターを紹介する上では欠かせない。
ライムスターに慣れてきたところで聴いてもらいたいおすすめの曲です。
ザ・グレート・アマチュアリズム
B-BOY3部作の2曲目。
草の根精神を忘れずに挑戦し続けるライムスターの「アマチュアこそ最強!」という熱いメッセージが込められている。
常にチャレンジャーであり続けようとする、彼らの気概に痺れます。
原曲も最高なのですが、モーニング娘。の『恋愛レボリューション21』とミックスした動画の出来がヤバイのでこちらもぜひ。
Born To Lose
B-BOY3部作の3曲目。
『B-BOYイズム』でヒップホップの原点を語り、『ザ・グレート・アマチュアリズム』で挑戦者としての志を歌ったライムスター。
このBorn To Loseでは「勝っても負けても終わりなんてものは存在しない。挑戦はずっと続いていく」という悟りとも言える境地を開く。
「日本語ラップ(笑)」という不遇の時代を過ごし、諦めずに挑戦し続けたからこそ日本のヒップホップを広め多くの人間に影響を与えた。『RIP SLYME』や『KREVA』といった世間に広く認知された後輩たちも送り出した。
でも”自分たちはこれで満足なのか?”
そんなわけない。現状に満足なんかしないし「ここで終わり」なんていうゴールも存在しない。
ヒップホップをやり続けること、それがライムスターというグループの人生そのもの。
ミスターミステイク
全てのダメな人に送る応援歌。
失敗する不完全な自分を認めたうえで「それがどうした!」と一蹴する気高さに溢れる。
今まさに落ち込んでいる人におすすめしたい一曲です。
ダーティーサイエンス
言葉の弾丸で体を撃ち抜かれた感覚に陥る。気持ちいい……
ライムスターの”ヒップホップ愛”に満ちた一曲。
ヒップホップを「ダーティーサイエンス」(汚れた科学)=「非正攻法」に例え、「ダーティー最高!」と絶叫する。
初めて聴く人には意味不明の歌詞だが、ライムスターを理解すればこの曲が至高のラブソングであると分かる。
ライムスターを好きになってから、ぜひ聴いてほしい一曲。
ONECE AGAIN
約2年の活動休止明けでとんでもない曲出しちゃうんだから、ライムスターやっぱり凄い。
″自分語り″の曲なので「誰にでもおすすめ!」とはなりませんが、絶対外せない一曲。
挑戦する全ての者に追い風を吹かせます。
日本全国のラッパーが次々とオリジナルの歌詞でリメイクしていくという、これまでにない反響を呼び起こした日本ヒップホップのアンセムとも言うべき名曲。
ラストヴァース
ファンへの愛・感謝を綴ったラブソング。
普通に聴いてるだけで十分カッコイイが、ライムスターのファンになってから聴くと感慨深いものがある。
そしてイントロと同時に襲い来る″圧倒的な終末感″。
活動休止明け一発目のアルバムの最後の曲でその内容・雰囲気から「戻ってきたはずなのに、まさかのサヨナラ!?」とファンをざわつかせた迷曲でもある。
勝算(オッズ)
これを聴いたことがライムスターを好きになった始まりです。
特にアルバム『ウワサの真相』の一発目にアカペラで収録されたバージョンが至高。
「メロディーも無いのに言葉遊びだけでこんなにカッコいい音楽を作れるもんなのか……」
マジで音楽史に残る金字塔だよ。
音楽は素晴らしい
これも『WACKWACK RHYTHM ISLAND』と同じで『Scoobie Do』というライムスターの後輩バンド名義の曲。
ただタイトルどおり、ジャンルがどうとか誰が歌ってるとか関係無く「音楽!素晴らしい!」と思える、テンション上がるポップチューン。
Scoobie Doもこの曲で初めて知ったのですが、最高のグルーヴを奏でる”Funkの伝道師”です。
この二組が出会っちゃったんだから、当然こんなに楽しい楽曲が生まれます。
これも「とにかく楽しくなりたい!」というパーリピーポーにおすすめ。
POP LIFE
酒のつまみにしたい味わい深い一曲。
「良いこともあれば悪いこともある。何も無い時もあって、どれも愛すべき日常なんじゃねーの?」ということに、ハッと気づかされる。
長年続けてきたおっさんたちだからこそ辿り着いた、落ち着いた大人のヒップホップ。
晩酌のお供におすすめです。
Walk This Way
発売当初は「ダサい」「ポップスに迎合している」など古参のファンからは批判が出ていましたが、この曲はライムスターの改めての意思表明なんだと思う。
長年やってりゃ変わることもあるし、変わらないものもある。どんな道を歩こうが選んだ″この道″を歩いていこう。そしてそんな自分に拍手を送ろう。
お手を拝借!!
ガラパゴス
「日本にはヒップホップは合わない!根付かない!」と、いつも繰り返される偏見に対する魂のアンサー。
きっかけとなったのは為末大さんによるTwitterのプチ炎上発言。
Mummy-Dの自分の情熱を込めたリリックと、宇多丸のド正論で論破する冷静沈着なリリック。表現の仕方は違うけれどヒップホップにかける想いは同じ。ライムスターというグループが費やしてきた「熱さ」が伝わる一曲。
マイクロフォン
「マイク」についてラップしています。
え?「そのまんまじゃねーか!」って?そう、そのまんま。
でもMummy-Dが、宇多丸が、ライムスターが、**何を考え、どんな風に曲を作り、マイクロフォンを通して私たちにメッセージを伝えてくれているのか?
全ては「ただ一人」のため。そしてほんの「一瞬」のため。曲を聴く一人ひとりに向けた、一瞬の高ぶりのために全てを出し尽くすライムスター。彼らのプロとしてのプライドの高さが垣間見えます。
Future Is Born
「ヒップホップがアメリカの片隅で生まれ日本にやってきて今に至る歴史と、ヒップホップの持つ無限の可能性」を歌ったヒップホップの新しいアンセム。
アルバム『ダンサブル』を代表する曲で、リズム、ビートはまさにダンサブル。ディスコを彷彿とさせ(行ったことないけど)、B-Boyたちがこぞってブレイクダンスするシーンが頭に浮かびます。
いつまでも進化し続けるライムスターはまさに「圧巻」の一言です。
Back & Forth
ライムスターのカッコいいところを抽出して100倍に濃縮しています。
それは宇多丸」とMummy-D、2人のMCの「かけあい」です。
リズミカルで矢継ぎ早なマイクリレーはまるで言葉の弾丸。ヒップホップという名の弾丸で頭を撃ち抜かれた衝撃。ライブでも最高に盛り上がる曲でしょう。
ノーサイド
「夢」「希望」「立ち上がれ」と、前を向いたポジティブな歌はたくさん溢れていて、たしかに「前をむくこと」こそがゴール。
でも、パッと立ち上がれることなんてないよね?そこまでの道のりには泣いて、へこんで、落ちるところまで落ちる。そんなネガティブなプロセスが必ずある。
というヒップホップだからこそできる自由な発想で「前を向くまでのプロセス」を歌い上げた名曲。キラキラで爽やかなポップに聴き飽きてしまったあなたへ、ぜひ。
耳ヲ貸スベキ!!
以上、たくさんの人に聴いてもらいたい・おすすめしたいライムスターの”耳ヲ貸スベキ”20曲を紹介しました。
「日本のヒップホップはイケてない!」と偏見を持つ方。じゃあもうヒップホップと思わなくていい!!『ライムスター』というジャンルだと思ってぜひ聴いてみてください。
ゴリゴリのヒップホップも、ROCKの魂溢れる曲も、POPで聞きやすい曲も多数そろえているのがライムスター。あなたの好みに合う曲がきっと見つかるはずです。
*1:記事のタイトル「耳ヲ貸スベキ」とは、ライムスターの初期の代表曲です。