”貴志祐介”の名前をご存じの方は結構多いのではないでしょうか。
名前を知らなくても『悪の教典』『新世界より』という名前は聞き覚えがありますよね!
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新世界より コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC)
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出す作品が全て話題を呼ぶ人気作家です。
作風はホラー・サイコサスペンスが多く、私が初めて読んだ貴志祐介作の小説が『黒い家』でした。
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これがメチャメチャ怖くて面白いの!!
黒い家のホラーは俗に言う「人間怖い」系です。ホラー小説って普段読まないけど、黒い家は凄かった。続けて『天使の囀り』『クリムゾンの迷宮』と読んじゃいました。
ですが、今回はこっちじゃなくて映画の方です。1999年に劇場版『黒い家』が公開されました。
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前々から映画の存在は知っていたものの、「黒い家の”狂気に満ちた世界”を実写化して伝えるのはムリだろう」と思い、敬遠していました。
だけれどもHuluで配信していることを知って、良い機会だと思い鑑賞したので感想を綴ります!
※以下、若干のネタバレあり。未読の方はまず小説読むことをオススメします!
あらすじ
金沢にある昭和生命保険北陸支社に勤務する若槻はある日、菰田重徳という契約者からの呼び出しを受け家に赴き、そこで重徳の継子・和也の首吊り死体を発見。和也の実母である幸子や重徳から保険金の催促を受けるようになった若槻は、本社の査定が待たれる中、重徳の異常さに息子殺しの疑惑を抱き始め、ふたりの調査を独自に開始する。
感想
結論からすると「それなりに楽しめたけど、やっぱりイマイチ」でした!
狂気に満ちた空気感
黒い家の劇場版と聞いたとき、あの不気味感・得体が知れない感をいかに出すかが大事な要素と考えていましたが、役者さんの好演も相まってその点は良かったなと思います。
とにかく菰田夫妻(大竹しのぶ、西村雅彦)の不気味さがたまらない。彼らが出てくると見ていて不安な気持ちになります。
「現実にいたら絶対関わりたくない。死んでも関わりたくない。ていうか関わったら死ぬ。」
ぐらい、怖くて不気味。
さらにもうひとつ。
物語の主人公である若槻(内野聖陽)は、ある種自分から危ないところに突っ込んでいったお馬鹿さんです。が、その恋人・恵は完全なトバッチリ。今までに真面目に暮らしてきただけなのに、今後の人生で消えることはないレベルのトラウマを味わってしまう……
普段は平和に見える私たちの社会。しかしそこには得体の知れない狂気が潜んでいて、思いもよらぬ瞬間、自分に牙を向けてくる。リアリティはない、いや、「感じることができないリアル」が存在する。そのメチャクチャさと狂人の存在に怯えること間違い無しです。
役者陣の熱演
何と言っても大竹しのぶさんの演技。
不気味 オブ 不気味。
静かな口調の時ほど逆に怖い。裏で何か考えているであろうことは明らかなんだけれど、言葉に感情が無いというか、心が無い。自分の求めるものに向かってまっしぐらに、じわりじわりと歩み寄ってくる、あの感じ。
まるで人間じゃないものと会話をしているようで、鬱々とした気分になります。
さらに主人公を演じた内野聖陽さん。黒い家の中で恐怖に震える熱演は凄まじかった。
普通のホラー映画なら恐怖しつつも、サクサクと前に進んで行っちゃうところですが、恐ろしすぎて手がガクガク震える。灯がブレまくる。
「本当に怖い、命の危険を感じたらこうなっちゃうよね?」
と言わんばかりの演技。見事。
演出に難あり
全体を通してはそこそこ楽しめたんですが、演出に関して「おいおい……」ということが多すぎて、これが印象を悪くしてしまいます。
主人公がひ弱
狂気に満ちたサイコパスを目の前にしたらビビりまくるのが当然で、その場面の演出・演技は前述のとおり良かったと思います。
しかし、普段の勤務態度や行動がひ弱すぎる。
原作のイメージでは、
「仕事ができる、頭も切れる、冷静沈着ないい男」
だったのに映画の中では、
「いつもオドオド、ヘラヘラのへっぴり腰、ダメなおじさん」
って感じなんです。
ところどころに小ボケを挟んでいて、コメディ感を出していたのでしょうが、あの主人公像ではそもそも何であんな面倒くさそうなことにクビを突っ込もうとしたのか、理解し難い。
無駄な演出と足りない場面
無駄な演出がある割に、必要な場面が足りてない気がします。
無駄な演出で言うと、例えば若槻と幸子のファーストコンタクト。
電話してるんだからさ、電話越しの幸子を画面に出す必要ないでしょ!!
相手があんな飄々とした感じで電話してたら、若槻の「自殺を考えているのかもしれない」という推測、初見だとしても「コイツが自殺するわけねーじゃん!!」とすぐにツッコミですよ。
さらに言えば幸子は見るからにヤバそうなやつなんだから、最初の電話越しに画面に出したら視聴者は「あ、コイツ絶対ヤバイな」って分かっちゃうじゃないですか。
もったいない。
逆に足りない場面は例えば”潰し屋”の三善(小林薫)。彼の初登場がさらっとし過ぎで若槻たちの口頭説明ありきのため、「”潰し屋”としての三善がいかに恐ろしい人間か」が全く伝わらない。
それが伝われば、幸子が三善を殺したことがトンデモなく恐ろしいという意味を持つはず。
謎の水泳飛び込みシーンと「乳しゃぶれや!」とかいらないから、きっちりそこを描いてほしかった。
もったいない。
原作観た人はとりあえず見てもいいんじゃないかな
黒い家自体を知らない人は、とりあえず原作読んでいただきたい。
映画よりも原作の方が数倍恐ろしいです。
逆に原作既読の方、まぁ観てみても良いんじゃないでしょうか。
ボロクソ言ってる感がありますが、ハナから期待値が低かったため「結構頑張って作ったんだな」とは思います。
やはり大竹しのぶさんの、狂気に満ちた演技は必見です。
最後に……映画『黒い家』はHuluで観れまぁす!!