こんにちは。
みなさん『アイシールド21』をご存知ですか?
作:稲垣理一郎、画:村田雄介のタッグで2002年から2009年まで週刊少年ジャンプで連載された、アメリカンフットボールを題材にした青春漫画。
![アイシールド21 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) アイシールド21 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61RhvDwqYFL._SL160_.jpg)
- 作者: 稲垣理一郎,村田雄介
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/03/19
- メディア: Kindle版
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「弱小チームが強豪達に挑む」という少年マンガの王道を進みつつ、「才能の壁」をテーマとして挑み続ける者、心折れる者、最初から諦める者たち「凡人・敗者」の心理まで深く描いた名作です。
さらに登場キャラたちは個性的で魅力に溢れ、キャラ立ちが完璧。そのキャラを活かしつつ日本ではマイナーなアメリカンフットボールをテンポを良く解説していく構成も素晴らしい。
そして何と言っても、予想だにしない試合展開で読者を掴んで離さない。
全編を通してストーリーの巧みさ、演出、絵の細やかさ・綺麗さがハンパじゃない!
そこで、名作漫画アイシールド21の主人公チーム「泥門デビルバッツ」の挫折と栄光の全15試合を振り返り、その面白さを改めてご紹介します
- 1試合目『恋ヶ浜キューピッド』戦
- 2試合目『王城ホワイトナイツ』戦
- 3試合目『賊学カメレオンズ』戦
- 4試合目『太陽スフィンクス』戦
- 5試合目『NASAエイリアンズ』戦
- 6試合目『網乃サイボーグス』戦
- 7試合目『夕陽ガッツ』戦
- 8試合目『独播スコーピオンズ』戦
- 9試合目『巨深ポセイドン』戦
- 10試合目『西武ワイルドガンマンズ』戦
- 11試合目『盤戸スパイダーズ』戦
- 12試合目『神龍寺ナーガ』戦
- 13試合目『王城ホワイトナイツ』戦
- 14試合目『白秋ダイナソーズ』戦
- 15試合目『帝黒アレキサンダース』戦
- この熱い戦いを見逃すな!!
1試合目『恋ヶ浜キューピッド』戦
記念すべき1試合目。正式部員がヒル魔・栗田・セナ(この時はまだ主務)の3人だけ、残りはみんな助っ人という弱小チーム。
だが恋ヶ浜もメチャメチャ弱く接戦に。主人公セナが謎のスーパ選手・アイシールド21となり、弱小とは言え相手全員をぶち抜く逆転勝利。伝説の始まり。
少年漫画の1試合目には有りがちな展開ですが、そのぶっちぎりっぷりは見ていて気持ちがいい。
最終回で同じ展開を利用するのも上手い。
2試合目『王城ホワイトナイツ』戦
セナのライバルとなる進清十郎との初対決。
「アメフトちょっと楽しいかも!」と思い始めていたセナの心をへし折る、努力する天才・進。
「才能は絶対であること」、「敵わないとしても戦い続けること」。この漫画のテーマが進とセナの対決に込められている。
ルックスだけでエースとしてチヤホヤされ、追いつけるはずもない進と自分を比べ苦悩する桜庭も印象的です。
3試合目『賊学カメレオンズ』戦
キャッチだけが取り柄のセナの相棒・モン太が加入してからの初試合。
この試合は進がいかに強大であるかの再確認と、不良校の番長・葉柱の薄っぺらい悪に立ち向かう「戦う勇気」を持ち始めたセナの成長を見てとれます。
悪役を爽快にぶっ倒す、気持ちいい試合です。
この時は葉柱があんなにいい味出すキャラになるとは思いもよらなかった……
4試合目『太陽スフィンクス』戦
栗田を始めとするデビルバッツのライン陣は、太陽スフィンクスの大型ラインマン・番場の絶対的な力の前に崩れ落ちる。
負けて負けて負けて負け続けたその先で、十文字・戸叶・黒木の「ハァハァ三兄弟」が覚醒し始める。
やられっぱなしは趣味じゃねぇんだ!
今までダメダメだった不良たちが、熱いものに目覚める熱い展開。
セナの必殺技『デビルバットダイブ』がここで初登場。厨二心をくすぐる作戦名のセンスが抜群です。
この頃から「裏主人公」との呼び声が高いヒル魔の活躍が多くなった気がします。
5試合目『NASAエイリアンズ』戦
セナの生涯のライバルとなるであろう、パンサーとの初対決。
これまでは日本人の間での体格・才能の差と戦ってきた泥門だが、ここに来て「人種の差」と戦うことになる。
人種の差で運動能力に劣るデビルバッツ。そこは知略で勝るヒル魔の巧みな作戦でアメリカ相手に肉薄する。
電撃作成(ブリッツ)の駆け引きが最高に面白く、読んでる間はまさに電撃が走りっぱなし!
だが、万を持して登場したパンサーだけは別格だった……
「触れもしないスピードにはどんなパワーも通用しない」
進のセリフが蘇る。
手も足も出ないセナ、そんな中「逃げるんじゃない、敵を倒すんだ」という闘争本能が目覚める。
「超えられない壁」を目の当たりにし、それでも前を向き、高みを目指すセナ。
時を同じくして王城の桜庭も進に追いすがっていた。努力する天才に何もない凡才は追いつくことはできるのか。
セナと桜庭の同じ「持たざる者」としての描写が胸を突く。
6試合目『網乃サイボーグス』戦
アメリカでの地獄の特訓デスマーチを乗り越え圧倒的にパワーアップした泥門デビルバッツの面々。
いよいよクリスマスボウルをかけた秋大会が開幕し、その初戦の敵は科学の力で戦うエリート集団・網野サイボーグス。
この試合は特訓して強くなった主人公が噛ませ犬を粉砕する、というよくある回。
網乃サイボーグスも登場からフラグを立て続け、噛ませ犬としていい味出してます。
セナの新必殺技『デビルバットゴースト』で敵を抜き去るシーンは圧巻です。
それにしてもセナ(アイシールド21)の試合に遅れての登場シーンは、ちょっと演出が過ぎるかな(笑)
7試合目『夕陽ガッツ』戦
網乃サイボーグスに勝って意気揚々のデビルバッツ一同。
夕陽ガッツは正部員2人であとは寄せ集めのチーム、下馬評も悪い。
楽勝!と浮足立つセナ達にヒル魔は、
「(勝率99%でも)1%負けるんだぞ」
と釘を刺す。
栗田と2人きりでも、チームが寄せ集めでも、どんな相手にも勝つことだけを考えてきた、勝率が0.01%でもあるなら諦めなかったヒル魔だからこそ、夕陽ガッツ正部員の本気が分かる。
才能の壁に挑戦し続けたヒル魔の秘めたる想いが、熱い。
8試合目『独播スコーピオンズ』戦
ヒル魔アゲ回。
付け焼き刃の浅知恵で戦う毒針に対して、本物の戦略・知略を駆使するヒル魔。
試合としては何てことない通過試合ですが、指揮官としてのヒル魔の有能さを印象づけます。
9試合目『巨深ポセイドン』戦
巨深の筧は「本物のアイシールド21」を知っていて、本物はアメリカ人にも負けない恵体であり、偽物である小さなセナとは似て非なるものだと語る。
さらに巨深は筧を始め、進化の天才であるラインマン・水町、2mを超えるバックスが揃う高身長チーム。
セナ、小結は体格の差に絶望しかける。
だが、高さで敵わなくとも小結には小さな頃から鍛えたパワーが、セナには体格に恵まれないからこその身軽さがあった!
2人は自分の長所を爆発させることで体格の差を見事の乗り越えます。
アイシールドは終盤の試合で大逆転劇が多いですが、巨深は同じ実力同士のシーソーゲムで常にハラハラする展開。
そして勝ちたいのは泥門だけじゃない!巨深の執念もハンパじゃなく、「勝った!」と思ってから襲いかかる水町の絶望感は鳥肌モノ。あのシーンは作中1番のトラウマでしょう。
さらにこの試合の主人公は何と言っても巨深の小判鮫先輩。「能力が無いからせめて他のところで力になりたい」というあの姿は、全ての凡人が涙なくして見られません。
この試合に出てくる作戦『ウィッシュボーン』とそれを完璧に扱うヒル魔の試合巧者振りも印象的。
敵チームに裏エースと呼ばれ、ヒル魔が公式にも裏主人公になった瞬間です。カッコいい。
10試合目『西武ワイルドガンマンズ』戦
東京大会で攻撃力最強と言われる西武とその要、天才QB・キッド。彼は今まで感情を表に出すことは無かったが、勝利への執念を燃やす泥門を前にしてついに本気を見せる!!
その力は圧倒的で、策士ヒル魔を持ってしても歯が立たない。絶対に勝てないであろうことを冷静に理解したヒル魔。
ここの無力感の描き方は、他に類を見ない秀逸さ。
「絶望」とはちょっと違うんですよね。ヒル魔の今までに見たことがない悲しそうなあの目が、「あ、ダメなんだ」と読者をも冷静に気落ちさせる。
前半終了を目前に諦めかけたその時……ムサシが帰ってきた!この演出が感動的すぎて震える。会いたくて会いたくて震える。会えて震える。
前半終了間際のゴールまでの距離は1年半前にムサシが抜けた試合と同じ、45ヤード。それを帰ってきたムサシのキックで得点する。この話のタイトルが『タイムアウトの夜明け』って、ドラマチック過ぎでしょう。
1万3千297時間と49分の時を超えて再び揃った泥門初期メンバーの3人。そして誕生した真・泥門デビルバッツ。
ここからのヒル魔の躍動っぷりが半端じゃない。それを現すキッドのセリフもいい。
「ヒル魔って男はねぇ…なんて言うかこれじゃんけんで言えば、驚くことにグーとチョキだけで闘ってたんですよ。それが今こそ彼に全部の出せる手が揃っちゃった。久々だよこんなに背筋が寒いのは。」
名言ですよ、これは。
最後の最後、オンサイドキックで試合が決まる、攻撃と攻撃のぶつかり合いな展開も熱い!
11試合目『盤戸スパイダーズ』戦
全国大会進出をかけた3位決定戦。「もう1人のアイシールド21」赤羽が立ちはだかる。アイシールド何人おるねん。
普段目立たないキッカーがポイントな上に、強風の中での変則的な試合展開が面白い。
セナの更なる成長はもちろんですが、この試合はヒル魔の風を切り裂く弾丸『デビルレーザー弾』が最大の見所!カッコいい!!
天候をも囮に使うヒル魔の底が知れない。
盤戸の赤羽は見た目もよく、ポジションもタイトエンドという何でもこなすユーティリティープレーヤー。しかも赤羽 VS セナは直接対決での決着ではなく、ラインとの連携でセナが勝つというものなんですよね。
だから赤羽は名実ともにいいキャラだと思ったのだけれど、この試合以降はギャグがメインになってちょっと残念。
12試合目『神龍寺ナーガ』戦
遂にきました。
とにかく全てが面白い!!この試合がアイシールド21、いや、全スポーツ漫画の頂点と言っても過言じゃない。
ワクワク要素がありすぎて話しきれないと思いますね、はい。
敵は連載当初から最強として描かれ続けてきた、「神」こと神龍寺ナーガ。
その中でも最強最悪、この漫画のテーマ「絶対の才能」を体現した金剛阿含。もうこれだけでワクワク。
さらに試合前、阿含とヒル魔の因縁の過去が明らかとなり読者の期待感は最高潮。
そんな期待の中、関東最強のコーナーバック・一休、金剛兄弟による『ドラゴンフライ』、人間の反射神経の限界を極めた阿含の『神速のインパルス』。
どんな展開になるんだろうワクワク!していたはずが、やられっぱなしの泥門。気付けば前半終わって圧倒的な点差。
と本気で思った人も多いのではないでしょうか。
だが試合はここから!!まず事前打ち合わせなしのオンサイドキック。ここまで苦難をともにしてきた泥門だからこその意志が揃った奇襲。ヒル魔の想いが全員に乗り移った!って感じでしたね。
さらにここまで1試合も出場できず「負け続けてきた」雪光の投入、セナの連続ブリッツを囮にした天才阿含を無視するトリックプレー!
スパイクを使い時計を止めながら少しずつ前に進み、仕込みに仕込んだ「インモーション」からの超ロングパス!
からの再びの阿含の絶望的存在。
からのからの、ダメだ!と諦めかけてからのモン太のキャッチ。『奇跡はその手の中に』。
ひとつひとつのプレーが「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!!?!?」と興奮させ、読んでるだけでメッチャ体力削られます。いや、おもしろいんだけどさ。
極めつけがヒル魔の
「0.1秒縮めんのに1年かかったぜ……!!」
もうスポーツ漫画史上最高のカタルシスと言っていいでしょう。
まさか連載当初に何気なく出た40ヤード走のタイムがここに絡んでくるとは……
試合展開だけではなく、それまでのキャラの因縁、練習の月日とその想いの全てを昇華させるスポーツ漫画史に残る名試合。
アイシールド21という作品の全てがここに詰まっている!とにかく読んで面白さを体験してもらいたいです。
13試合目『王城ホワイトナイツ』戦
全編を通して唯一、同じチームとの再戦。
進とセナの戦いに終止符が打たれます。
試合が始まってみると、努力する天才、パーフェクトプレーヤーである進が圧倒的。
阿含の時の絶望感とは違う、鍛錬を積み重ねてきた天才だからこその隙のなさ。さらにその天才と肩を並べるまでに成長した凡才・桜庭。敵ながらあっぱれの一言です。
進とセナの決着もですが、この試合の見せ場は何と言っても雪光!!
「勉強ばかりしていた自分じゃちょっと頑張ったからって超人たちに敵うはずがない」
それを一番理解していた、それでも諦めなかった雪光だからこそ、彼だけに思いついた誰もが予想しないプレー!
高身長という一種の才能を持つ桜庭と比べて、雪光は真の凡才を体現しています。そんな彼が天才に一矢報いるあの瞬間が、「才能は絶対だ」という世界に凡才として一筋の光を与える。
個では勝てなくても、もがき苦しんだ末に小さな小さな一撃を放ち、仲間に後を託す。全員で掴み取る勝利がここにある!涙なしでは見られない最終回です!(違う)
14試合目『白秋ダイナソーズ』戦
うーん、ここからがねぇ。
試合展開は文句無しだけど、バランスぶっ壊す峨王だけはちょっと受け入れられない……
誰もが忘れていたであろうヒル魔から姉崎へのクイズの3問目。
自分の怪我をもトリックプレーに使うヒル魔の執念。
力こそ全てだというアメリカンフットボールの原点に帰る峨王の存在。
それに対抗すべく「自分のフィールドで力を炸裂させる」ことこそがアメフトだと気付くセナ。
蛾王の圧倒的な力を打ち砕く栗田の5年間の積み重ね。
試合展開や過去話の再利用、敵の白秋のバックストーリーも最高に面白いし、作者とキャラクター達の「アメフト愛」が存分に伝わってきます。
それでも小指が触れただけでPCぶっ壊れたり、普通にタックルしただけで骨折させる力、というのはちょっとやり過ぎじゃ……「素手の人間相手に銃ぶっ放してる」感があって白ける。
ヒル魔を怪我させるだけなら他に方法があったと思いますが……
読者に恐怖感を植え付けるという意味ではありなんでしょうけどね。実際にキッドがやられた時はとんでもない恐怖だった。
15試合目『帝黒アレキサンダース』戦
いよいよクリスマスボウル!!
ついに「本物のアイシールド21」大和猛が登場します。さらにモン太の憧れだったプロ野球選手・本庄の息子である鷹という二人のエースを揃える帝国。
神龍寺を凌ぐ絶望感。だったはずが……
鷹はまだいいとして、やっぱり大和のインパクトが足りない。
「倒れない」というのは確かにとんでもなく凄いことなんだけど、その見せ方・伝え方は失敗した感じがあります。
とにかく地味だし、キッド・進・阿含のように当初から絡みはなく、言ってしまえばポット出で一発屋のキャラ。魅力が伝わらなかったです。
だけど!キャラはあれでも、
最終試合にしてチームを牽引してきたヒル魔が最初で最後に選んだ作戦は「仲間に背中を預ける」。
ヒル魔が信じたもの、それは、
雪光がルート通りに走っていること。
セナが大和を抜くこと。
栗田が自分を守ること。
ムサシがキックを決めること。
序盤の恐怖政治、メンバーが足りない、格上が相手の中でのトリックプレーの連発、今までの彼のアメフトへの苦しみと情熱を知っているからこそ、この作戦には目頭が熱くなる。
最後に決着を付けるのがセナではなく泥門デビルバッツを創った3人の『60ヤードマグナム』であることも見事な最終試合と言えます。
この熱い戦いを見逃すな!!
以上、『アイシールド21』での泥門デビルバッツの全試合を振り返りました。
この作品が全編を通して伝えていることは
「才能という絶対的な壁を前にして、諦めるか戦い続けるかを決めるのは自分自身。才能に打ち勝ちたいなら挑み続けて、自分が最大限に生きるフィールドでその力を爆発させろ!」
ということだと私は感じました。
魅力的なキャラクター、アメフトというスポーツの面白さ、少年漫画の王道を行くストーリー。リアルな凡人・敗者の心理描写。
必ずあなたを引きつける魅力が見つかります。
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