小さな星がほらひとつ

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一番怖いのは人間だ。映画「河童のクゥと夏休み」を観ました。

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こんにちは。

Huluで映画河童のクゥと夏休みを観ました。

公開当時から存在だけは知っていて、タイトルやパッケージ写真のイメージから「少年と河童の友情的なあれね。」と思っていました。

が、全ッ然そんなんじゃなかった。

とても子ども向けのアニメーションとは言えません。けれども、子どもも大人も観るべき人間社会の闇を映し出す素晴らしい作品でした。

※以下ネタバレ注意

あらすじ

夏休み前のある日、康一が学校帰りに拾った石を洗っていると、中から河童の子どもが現れた。 第一声から「クゥ」と名づけられた河童は人間と同じ言葉を話し、初めは驚いた家族もクゥのことを受け入れ、クゥと康一は仲良しになる。やがてクゥが仲間の元に帰ると言い出し、康一はクゥを連れて河童伝説の残る遠野へ旅に出る

(シネマトゥデイより)

感想

あらすじだけ見るとやっぱり「友情」「絆」的なものが主題だと思ってしまいます。それも間違いではないのですが、この作品が映すのはそんなキレイごとだけではない。

全編に渡り「人間の醜さ・エゴ」を見せつける作品でした。

冒頭からかましてくるスタイル

あらすじには書いていませんが、まずは冒頭のシーン。江戸時代のクゥと父親の会話から始まるこの一連の場面が、何から何までおどろおどろしく観る者を不安な気持ちにさせます。

クゥの父親の「人間の方が恐ろしい」発言。

酒を飲み悪事を口にしながら歩いてくる侍(役人)。

その眼前に出て丁寧にお願い事をするクゥの父親

侍から見る河童は不気味な化物で加えて悪事を聞かれたと完全に勘違いし、侍はクゥの父親を刀でバサーっ!!


冒頭数分で「あ、これ子供向けアニメじゃないな」と思い知らされる。侍が人間以外の生物を殺傷する違和感と恐怖。河童の見た目は確かに不気味だけれど、行動が異常なのは明らかに人間。友情どころか人間対妖怪の全面戦争が起こるんじゃないか?と思わせる展開で一気に物語の世界にのめり込みます。

河童の異物感

時は流れ現代、化石になっていたクゥは偶然にも康一に拾われ息を吹き返します。序盤から中盤にかけてはクゥと康一、さらにはクゥと上原家との微笑ましい出会い・親交の深まりで物語が進みます。

ただし観ている人にとってクゥ(河童)は単に「かわいい」「ペット」的な生き物ではなく、明らかに我々とは異なる世界の生物だということが強調され描かれています。

特にカタツムリをチュルッと食べるあのシーン。


戦 慄


この河童をペットのように感じたのは人間の一方的な思い込みであり、彼らには彼らの生態がある。それを忘れ徐々に「あ、クゥかわいいかも」と思い始めていた我々は、不意に頭をガツンと叩かれます。

そういう意味で上原家は突然の河童の来訪にいともたやすく適応しすぎなのですが、その例外が康一の妹・瞳です。なかなかクゥを受け入れられず、いつまでも敵視しています。観客に近い目線で存在感があり、それに加えクゥを気味悪がる表情がリアルでかわいく、いい味出しています。序盤は瞳のシーンだけでご飯3杯はいけますね!

トラウマの展開

そうして中盤に差しかかるところで康一とクゥの遠野旅行があり、「やっぱ河童と言ったら遠野だよね!」と話を盛り上げつつ、いよいよこの物語のターニングポイント・テレビ出演へと差し掛かります。

このテレビ出演の経緯もまぁ腹が立つ。なぜテレビに出るって康一の父・保雄が勤める会社からの圧力です。完全に人間の都合。いちサラリーマンの保雄には同情しますが、結局人間の都合でクゥがおもちゃにされてしまう展開。いやぁ人間って自分勝手で醜いねー。

そうしてテレビの生放送が始まりここの展開が本当に秀逸で、恐ろしい。


”先祖が侍(役人)”で”河童はいる”と言い続けてきたおじさんが箱を抱えて入ってくる。

え?あの侍に似ている……

その持ってる箱……ねぇ、それって、もしかして、あれだよね……?

いやいやダメダメ!ダメだって!やめろやめろ!やめ……


うわ〜〜〜〜〜〜〜


もうホラーですよ。遠野旅行を通じてクゥに感情移入してしまっていた私にとってはトラウマです。

おっさんの死。私「人間死ねっ!」

そうして話は佳境に入りますが、ここで本作最大の

人間死ねっ!!

ポイントが訪れます。それが上原家の愛犬でありクゥの最大の理解者であった”おっさん”の死。チャラそうな男が車に乗って出てきた時点で嫌な予感がしたんですよ。


まさかとは思うがやめてくれよ……

おいおいおいおい!

ばか!ばか!やめろーーーーーー!

……


貴様の死をもって償えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!


怒りの号泣です。

それでおっさんに駆け寄り悲しむクゥを、周りの人間がまたパシャパシャ写真で撮るんですよ。

人間死ねっ!(本日2回目)


個人的にはここがストーリーの最高潮であり、その後何やかんやあってようやく上原家は真の意味でクゥ(河童)と理解しあえるのです。おっさん、ありがとう……!!

特にクゥが上原家から出ていくと知った時に瞳が悲しむ姿が、前半にクゥを毛嫌いしていた姿との対比となり”紛れもなくクゥが上原家の一員となった”ことを伝える良い演出でした。

映し出される人間社会の闇と一筋の光

ということで最後は「離れていてもクゥと上原家はつながっている」的な終わりではありますが、それは同時に「やっぱり河童と人間は一緒に住めないよね」という意味でもあります。

さらに話の終盤でクゥが東京の街を見下ろし呟いた「まるでここは人間の巣だ」というセリフ。このセリフからしてクゥは生まれた場所を人間に奪われ、沖縄に追いやられたというのが紛れもない事実です。

感動的なラストよりも全編に渡る人間の身勝手さの方が個人的には印象深い。


この作品で描かれる人間の身勝手さは他の生物に限った話ではなく、人間同士もなんですよね。

康一の仲間だったはずの同級生は「河童を見せてくれない」という理由で康一をいじめだす。

マスコミたちは上原家をマークし無理矢理クゥの写真を撮る。

クゥの噂を聞きつけ上原家に群がるやじ馬たち。

おまえらいい加減にしろよ!

と言いたくなる行動の連続でした。


こんな人間が支配する世界で河童のクゥが共生できるはずがない。だから上原家とクゥが選んだ「離れた土地で干渉しあわずに暮らす」というのが、唯一人間と他の生物とが同じ地球で生きていくための術なんだと思います。

それでも最後、にクゥと上原家が仲良く撮った写真。それは「違う生き物でも、離れていても、そんなこと関係なく家族になれる」という辛く悲しい選択を薄っすらと照らす救いの光に感じました。

とにかくみんな、観よう!

クゥと上原家の絆」「人間と他の生物との共生」「人間たちの身勝手さがもたらす災い」などなど、様々なテーマが込められてた本作。

これを観てどのようなメッセージを感じ、どんなことを考えるでしょうか。子どもも大人も関係なく、たくさんの人に見てほしい映画でした!